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定年再出発  

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「冬のソナタ」の秘密1




メロドラマの話

 私は長くドキュメンタリーをやってきた人間なので、まさか定年の1年前にメロドラマに関わるなんて思ってもみなかった。前にも書いたように、ひょんなことから「冬のソナタ」に関わり、ついに「冬のソナタ」の特集を4本も制作することになったのだ。その折メロドラマって何だろうと考えることになった。
 メロドラマは感傷的で通俗的な物語と思われ、何となく低く見られている。実はメロドラマはヨーロッパ近代の歴史の中から生まれてきた由緒のあるものなのだ。王侯貴族の世の中が滅び教会が世俗化していく17世紀頃、イタリアで演劇としてメロディのあるドラマつまりメロドラマが誕生したのだ。
 18世紀になってイタリアで起こったメロドラマはフランスへ移入された。支配層が愛したそれまでの「悲劇」(例えばギリシャ悲劇)に替わって、メロドラマは新しい階級のブルジョワによって育てられ成長していったのである。人々はこれに熱狂した。当時の論客ディドロはメロドラマのことを「感極まって泣き崩れることの喜び」と讃えている。
 メロドラマの登場人物は、「悲劇」のように神様や英雄ではなく、身近な生身の人間だった。その人生を舞台で演じたのである。しかもあらかじめ運命が定まっている神々と違って、人間は偶然や病気、事故によってどんどん運命が変化し、さまざまな事件を引き起こして行くのだ。次々に起こる事件、恋愛、苦難。観客の心をつかまないはずがない。
 偶然が多すぎるとかすぐ事故だとか言って「冬のソナタ」を批判する人はメロドラマの精神が分かってないようだ。そういう道具立てで芝居を盛り上げることこそメロドラマのねらうところなのだから。その芝居の進行に合わせて「感極まって泣き崩れることの喜び」を、観客は味わっていた。
 こうやって演劇として発達したメロドラマは、19世紀に入っておこってきた映画にその精神が引き継がれる。ハリウッドで大きく発展する。そして20世紀にはテレビに。
 最も近いメロドラマは言うまでもなく「冬のソナタ」であった。これを作ったユン・ソクホ監督はまさにメロドラマの申し子と言って過言でないだろう。冬のソナタの随所に見られる仕掛け、細部へのこだわり、美しさへの憧れ――ユン監督はすべてを備えている。彼の資質については書くことがあまりに多い。いずれ別の日に書くことにしよう。

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# by yamato-y | 2005-02-19 20:07 | 冬のソナタの秘密 | Comments(4)

美しい生き方

ちょっとしたアイディア

 新しい番組のイメージをちょっと思いついた。
昨年は「冬のソナタ」で韓国のことをずいぶん考え番組を作った。同時に、日本人の美しさ、素晴らしさを表現したいなあと考えている。
生き方の美しさを描いてみたい。
 以前、向田邦子さんの恋、津田投手の闘病の番組を作ったことがある。そこには、美しい日本人がいた。それをもっと分かりやすく、若い人に伝えたい。
昨夜、このアイディアでスタッフに集まってもらって、みんなで議論した。
誰か、素敵な人を知らないだろうか。

 丹沢も 大山もいづこ 冬のもや
# by yamato-y | 2005-02-18 15:53 | Comments(0)

林住期

大磯暮らし

湘南大磯に住んで十年になる。住み始めて1月足らずで脳出血で倒れた。およそ2年にわたりリハビリ生活となった。そんなつもりではなかったが、海と山のある暮らしは私にとってよかった。人生論的に言えば、「林住期」となるか。
 私の住むモミジ山は海抜30メートルほどの丘のような里山だ。近所には画家のカヤマ・マタゾーさんのアトリエやムラカミ・ハルキさんの家がある。山から下りる道は二つ。車が通る舗装道路と歩いて降りる近道だ。私は山道が好きでよく歩く。近道を使うと駅まで10分で行く。途中人家がなくケヤキやクヌギ、ナラの雑木林が続く。降りきったところに、かつて家が建っていた空き地があって、そこにポツンと古井戸が残されている。中は埋め戻されているのだが、夜一人でそこを通ると、「貞子」が現われそうで怖い。恐怖で心臓が痛くなる。私は無類の怖がりなのだ。
 にもかかわらず夜の森(特に冬の森)を歩いて帰るのが好きで、ドキドキしながら月光で明るい夜の森を抜けて家に向かうことになる。おまけに井戸から5メートル先に古墳の横穴がある。古代人の墓ということで、いつも黒い口をぽかりと開けている。なぜ、こんな所に作ったのか、残念。 
カヤマさんのアトリエの辺りを散歩していると、晴れていても長靴を履いた品の良さそうな白髪の老人によく会う。画集の中にある紹介写真で見たカヤマさんに似ていたので、「先生、いつまでもお元気でがんばってください」と声をかけると、「どうも、有難う」と先生は応えた。以来会う度にあいさつを交わしていた。
 一昨年、カヤマ先生は文化勲章を受章し名声はさらに高まった。アトリエには深夜遅くまで灯がともるようになった。一度、あの部屋で作品を拝見したいものだと密かに憧れた。昨年先生は急死した。76歳だった。
 ところが、長靴を履いた老人はその後も山道で会う。どういうことだろうと訝しく思って隣人に尋ねると、「えーっ あの人はリタイヤしたM爺さんだよ。もっぱら孫の世話をしてる」と言うではないか。
 あの野郎と思っても悪いのはこっちだ。彼が名乗ったわけではない。こちらが勝手に勘違いしたのだから。でも、あの態度はなんだ。いかにも風流を解するような風情で、小川をながめたり雑草を摘んだりしているのはなんだ。そればかりか鷹揚に「ありがとう」とはなんだ。大磯でよく見る旧華族のような振る舞いで。そういう思わせぶりな態度をとるからこちらも間違えるのだと、怒ってみても詮無い。ばかりか、自分の間抜けさ加減に愛想が尽きる。
 あの爺さん、今も山中をふらふら歩いている。

 山鳥の 影追いやすき 冬の森


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# by yamato-y | 2005-02-17 15:47 | Comments(0)

沈思

 退役の悲しみ

私がいた古巣が騒がしい。昨年来の混乱はいっこうに止まることがない。組織そのもののレゾンデートル(存在理由)が問われている。
 退職したから、悲しくない関係ないといえば嘘になる。今回の出来事の原因は私の現役時代に起こっていたわけだから、責任の一端に連なっていることにもなるだろう。視聴者や後輩に対し申しわけないし、口惜しい。
放送は文化だと歯をくいしばって、厳しい予算と苛酷な状況の中で番組を作ってきた先輩や仲間の顔を思い浮かべると、悲しみはいや増す。
 私が入社した1970年代と現在では、社会が大きく変わり倫理も大きく変化した。価値観も180度といっていいほど違ってきている。当時、常識とされたことが今では不当不法のことのように思われることも多々ある。
 かつて巨匠と言われた人たちは豪傑伝説をもっていた。あるディレクターは取材用に駱駝を購入したとか、あるカメラマンは当事者に知られずこっそり撮ったとか、伝説の枚挙に暇がない。それもこれもいい番組ができれば感動を与えることができれば、結果オーライ、ということであった。
 そしてこの伝説は現場では英雄的に語られ、後輩は憧れの目で聞き入ったものだ。そうやって積み上げてきたキャリアと社会の厳しい目との乖離が、この数年激しくなった。
 むろん、今問われている不正はいつの時代も変わらない不正であって、弁解の余地はない。
 制作者である私たちはどうやれば視聴者の信頼を再び取り戻すことを、模索できるのだろうか。陥っているニヒルな深い穴から、どうやって這い上がることができるのだろうか。 職場の隅で通勤電車の中で、私は沈思する。どんなに辛くとも目をそむけないで沈思する。

 青鳩の声とどかずに時雨かな

http://www.blogpeople.net/
# by yamato-y | 2005-02-16 18:03 | Comments(0)

「夏の香り」の山の魅力

 韓国の山
  またまた「冬のソナタ」のユン監督の話題となるが、昨夜渋谷のツタヤでユンさんの「夏の香り」第1巻をレンタルした。この物語の噂はよく聞かされてはいたが未見だったので、新しい日本語字幕バージョンが出たと聞いて借りに行ったのだ。
 オープニングのタイトルバックが、雨が注いで生まれる水の輪というところなど、冒頭からいかにもユンさんらしい画作りがあちこちに見られる。脚本には冬ソナコンビのあの二人の名がある。何となく冬ソナを引きずっているのかなと先を見ていくと、確かに何かが起きたとき使われる効果音楽のピアノ音も似ている気がする。今回のライトモチーフの曲はシューベルトのセレナーデ、なるほど。くすっと笑わすユーモア感覚もしっかりある。でもカッティングのテンポはやや早い。服の趣味やスタイリングは「冬のソナタ」のほうが私は好きだが。
まあ、「冬ソナ」に似ているといえば似ているが、この作品はこの作品なりのテーストがあると思わせたのが、登山のシーンだ。冬ソナの高校生のキャンプの時より本格的な登山、というよりトレッキングが第1話の主な舞台になっていた。
長い間、私は韓国では禿山が多いと思い込んでいた。日本によって植民地として統治されてから朝鮮戦争まで数々の戦乱が続き、朝鮮半島の草木が疎らになったと勝手に考えていたのだ。
 ところがユンさんの作品見ると、その先入見を払拭される。実に青々とした木々が山々のなだらかな斜面に叢生している。さらに滝や山清水が流れて水が豊な山系だということが知れる。
物語のヒロインの職業はフローリストで野生の花を求めてこの山に入ってきたのだ。ヒーローはイタリア帰りの風来坊。帰国してすぐ思い出の山に登ってきた。実はヒロインの胸の奥の心臓は、かつてこのヒーローの彼女だった人のものだ。むろん二人はそんなことを知る由もない。だが理由もわからないのに、見知らぬ二人はすれ違うとヒロインの移植された心臓が早鳴りをはじめるという、いかにもユン好みのストーリー。
 山でのアクシデントで、二人は山荘に一泊することになる。そこでコーヒーを沸かして呑むシーンがある。やはりコフェルで飲むコーヒーは格別だなあと、山好きらしいセリフが飛び出す。きっとこういう会話は、ユンさんが指示しているはずだ。
 前にもユンさんとマネージャーのチョンさんとは毎週休日にはソウル近郊の里山をトレッキングしていると書いたが、ユンさんの山好きは半端ではない。1ショット1ショット山の良さを表している。そして時折降る天気雨が美しく効果的だ。この雨をめぐるカットバックの世界がまた美しい。青々とした山、美しい天気雨、野の花。そして物語もまた思わせぶりに進行していく。うまい設定、繊細な画作り・・・。
 今、私は検屍官シリーズのミステリーに凝っているのだが、このドラマに引きずられそうだ。これでまた「夏の香り」による寝不足が始まる。


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# by yamato-y | 2005-02-08 17:16 | 夏の香りチェック | Comments(0)


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