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冬のソナタの秘密5

雪はげし
今年は東京も雪が多い。昨夜も遅く降った。今朝起きてみると目黒台地が白くなっていた。

 雪は「冬のソナタ」の重要なシンボル。ソナチアンが選んだベストシーンの第1位が、「初雪の日のファーストキス」だったぐらい、このドラマにおける雪の印象は深い。最初、ユン監督はこのキスシーンを夜の湖で撮影する予定だった。というのは夜のほうが雰囲気が出るから。ところが、初恋の純粋さを示すなら白い世界のほうがふさわしいのではないかと思い直した。それで、午前の光がよく反射する時間をえらんで、雪の中のキスとなったのである。小鳥たちのついばむようなピュアで可愛いシーンが生まれた。このエピソードをグランドフィナーレの中でユン監督は明かしてくれた。
この物語のシンボルが雪ということを、もっとも表しているのがタイトルバックだ。ナミソムの林に霏々として降る雪、このモノトーンの雪の風景を表紙にして、物語「冬のソナタ」が紐解かれていく。
このタイトルを見ていて思い出した俳句がある。美人の誉れ高かった橋本多佳子の詠んだ句。
       雪はげし 抱かれて息の つまりしこと
そうだ。日本でも同じ感性を持った人が今から30年以上前にいたのだから、私たちが今「冬のソナタ」を見て感動するのは当然といえば当然なのかもしれない。
今朝の残雪を見てそう思った。

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# by yamato-y | 2005-02-25 17:01 | 冬のソナタの秘密 | Comments(0)

冬のソナタの秘密4

キム次長のすてきな素顔

  韓国では連続ドラマの長さは69分であったり72分であったり一定ではない。日本で「冬のソナタ」が放送された時は全て同じ長さ60分に調節されている。実はカットされたところにドラマの仕掛けや伏線など「冬ソナ」のエキスが一杯あったのだが、ユン監督は断腸の思いで短縮したのだ。総合テレビで放送が始まって以来、元の形を見たいというソナチアンの要望がNHKに続々と寄せられた。そして局としては異例の放送を決定。12月にノーカットの「冬のソナタ」完全版をまとめて特別放送することにした。
その素晴らしさを広く知ってもらい再び「冬ソナ熱」を盛り上げるため、私は「冬ソナ」特番第4弾を作ることとなった。実は私は3本の特集をすでに作っているのだが、まだ知られてないことがあるということで「もっと知りたい冬のソナタ」と題して取材することにしたのである。
 早速白羽の矢を立てたのが、主人公の兄貴分でキム次長として軽妙な演技を見せ評判をとったクォン・ヘヒョさん(39)である。新潟中越地震の翌々日、ソウル大学路のスタジオで会うことにした。韓国はちょっとした演劇ブーム。たくさんの芝居が上演されている中でクォンさんの出演する「アート」が評判になっていた。クォンさんはうまい役者として注目されている。
われわれ取材班と顔を合わせたとき、彼は開口一番「この度の地震で、日本の被災者の方々はお気の毒で心配です」と眉をひそめた。心から悲しげで、誠実な人柄に好感をもった。
クォンさんは、ソウル特別市の北の郊外緑多い住宅街に妻と一男一女の4人で暮らしている。妻はシェークスピア劇で共演したこともある同じ劇団の女優(だった)ジョ・ユンヒさん。結婚して10年になる。3回流産したと悲しげに当時を語るキム次長、二人の間にはなかなか子どもが出来なかった。子宝に見放される度に犬を飼ったので2匹の愛犬は家族同様だと、家の近所の森を愛犬と散歩しながら言う。
 そして、長男ユジン君が誕生した。現在6歳になる。苦難のあげく授かった子だから、ひときわ可愛い。その5年後長女のジインちゃんが生まれる。いつしかクォンさんは子煩悩になっていた。
アウトドアの趣味はいかがですかと尋ねると、自然を変えるようなことはしませんという律儀な返事。クォンさんは自然保護を進めるNGOの活動に参加しているのだ。子宝に恵まれてから、命の大切さを痛感し、子どもたちの将来を案じて環境問題に取り組むようになったという。
あなたの楽しみは何かと尋ねると子どもたちの将来だよと照れくさそうに笑う。自分で思っているだけだがと断りながら、愛児たちが「国境なき医師団」に入って仕事するような人生を将来送ってくれると嬉しいなあと、夢見るように答える。
 夕刻、長男を迎えに女子大の付属幼稚園に出かけることになった。仕事がオフの時はいつも子どもと共に過ごすことを最優先にしている。それを撮影したいと言うと気さくに応じてくれた。午後5時、幼稚園の玄関に飛び出してくるユジン君に、クォンさんは手にしたサッカーボールをポーンと放る。息子ははしゃいでその玉を大きくキック。その後から級友たちもワイワイ集まってくる、入り乱れてのボール遊びが始まった。撮影のためのパフォーマンスでないのは、他の子どもたちがクォンさんにとてもなついていることで分かる。日がとっぷり暮れるまでゲームは続いた。
 すべて取材を終えた後、クォンさんは我々取材班を焼き肉店に連れていってくれた。彼のマネージャーも加わってミニ打ち上げとなる。その店の名物は珍しいウナギの「焼き肉」だ。日本の蒲焼とは違って、ウナギのぶつ切りが白身で焼かれる。焼けた白身と野沢菜のような漬物と合わせてサニーレタスに包んで食べる。熱々の身が冷たいレタスと合わさって美味だ。ここはなかなかの老舗ですよと、ちょっと鼻が高いキム次長。そしてドラマでも見せた「ホッホー」と例の合いの手を、話の端々に入れる。元来の彼の癖なのだ。会話の間、実に楽しげに「ホッホー」を連発し、かつ他人の話にじっと耳を傾ける。けっして自分中心ではない。
 食事をしながら再び新潟中越地震の話題になった。クォンさんは、あれだけの地震で被害が軽微だった新幹線の技術は凄いですねと称賛する。1964年開業当時からずっとウォッチングしてきましたよと、半端ではない鉄道ファンとしての知識を披露してくれた。クォンさんはメカに滅法強いのだ。趣味はカメラでローライのプロ仕様を使っている。実は、若い頃「ナショナルジオグラフィック」の写真記者になりたかったそうだ。
 ジョークを飛ばしながら、食卓にも目を配り、暖かくもてなしてくれたクォンさんに、スタッフはすっかり魅了された。別れの握手をするとき、「冬のソナタ」を通じて日本と韓国の間が近くなったことが本当に嬉しいと彼はギュッと力をこめた。驚いて顔を見ると、あの瓢軽なキム次長とは違う真面目なクォン・ヘウヒョさんがいた。


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冬のソナタの秘密4_c0048132_15472549.jpg

# by yamato-y | 2005-02-24 17:41 | 冬のソナタの秘密 | Comments(2)

冬のソナタの秘密3

グランドフィナーレ
                                
 昨年の8月21日に最終回を迎えたNHK総合テレビ「冬のソナタ」は20・6㌫という驚異的な数字を記録した。1千万近い人が魅了されたのである。このドラマはこれまでに衛星で2回放送されていて「新品」ではない。韓国ドラマで放送が深夜で、しかもオリンピックの最中と厳しい環境にもかかわらず、この快挙となった。
 春から「冬のソナタ」を総合テレビで放送を始めるので、特集番組を作ってほしいと依頼されたのはまだ寒さが残る1月だった。入社以来34年、ドキュメンタリー一筋の私としてはメロドラマのキャンペーンと知って面食らった。まもなく定年となる私の前に純愛をテーマにしたドラマが現れたのだ。特番作りの参考にと全20話をビデオで視聴して、浅薄な私の認識が打ち砕かれた。このドラマは単なる純愛を描いているわけではない。自己犠牲という愛のテーマを丁寧かつ誠実に見つめていた。現代の日本人が忘れてきた多くのものがあった。心に残る言葉、懐かしく美しい風景、切なくも美しい生き方――大勢の人の心を掴んだ秘密が分かった気がした。
 私は特番制作に本気になり、韓国へ飛んだ。ヒロインのチェ・ジウを引っ張り出すことにしたのだ。3月初旬チェさんの初来日実現。こうして「冬のソナタへようこそ」(3月27日放送)は生まれた。日を置かずに今度はヒーローのぺ・ヨンジュンが来日。すぐに「素顔のぺ・ヨンジュン」(4月30日放送)という特集を不眠不休で作った。世の中にヨン様、冬ソナという言葉が飛び交うようになる。 ドラマの本放送が始まった。視聴率は5月に入ると2桁台に突入ぐんぐん上がっていく。冬ソナは社会現象になり始めた。
 そして最終回を迎えたのである。熱いファンレターが続々と届く。このドラマによって救われたという便りや青春を取り戻したという声やメールが係に2万件以上寄せられたのである。生真面目なファンたちを私は密かにソナチアンと名付けていた。――ソナチアンの熱い思いを見過ごせないと、特別番組が計画される。またしても制作担当は私となり、思い切って公開番組のイベントを企画した。8月28日、NHKホールに三千人のソナチアンを集めユン監督や脚本家を招いて、「冬のソナタ・グランドフィナーレ」が開くことにしたのである。観覧希望の葉書が2週間で8万通届いた。当日会場は熱気につつまれた。テーマ曲に聞きほれ、名場面に涙ぐむソナチアンがあちこちに見られた。登場したユン監督をじっと見つめるソナチアンがいた。
グランドフィナーレの最後にユン監督は、このドラマを通して日本人から大きな感動というプレゼントをもらった、これからも両国の交流のために力を尽くしたいと顔を紅潮させて語った。2005年の今年は日韓条約40年という節目で「日韓友情年」にあたる。


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# by yamato-y | 2005-02-23 18:13 | 冬のソナタの秘密 | Comments(0)

「夏の香り」チェック②

 天気雨

今朝は不思議な天気だった。麓は晴れているのに山は雨が降っている。この季節にしてはめずらしい、天気雨だ。
「夏の香り」の前半(まだ全部チェックしていない)のキイワードに天気雨がある。この天気雨に遭って雨宿りする男と女。天気雨のことを「虎が婿入り」すると男は言い、女は「狐の嫁入り」と言う。ここから物語がほどけていく。
 この雨の撮りかたは美しい。さすがユン監督だ。秋雨や春の長雨のようにへヴィに降る雨ではなく、にわか雨といった爽やかな雨に仕上がっている。まさに夏の香りがするような『万緑の雨』だ。万緑つまりオールグリーン。そういえばタイトルバックも濃い緑に雨粒が落ちて波紋が広がるといった意匠だ。天気雨―緑―心臓(心臓については別の機会に書こう)。
これらのキイイメージが「夏の香り」を彩っている。
 にわか雨で雨宿りする男女というのは、映画「8月のクリスマス」(ホ・ジノ監督1997年)や「ラブストーリー」(クァク・ジョエン監督2003年)でも使われた設定だ。雨と恋というのは韓国では定番なのかもしれない。それぞれ美しかった。特にラブストーリーの主演ソン・イェジンはこの「夏の香り」のヒロインヘウォンを演じている。このことは特筆しておこう。病弱だった彼女が心臓を移植されて活発でお茶目な人格に変わっていくこと、時々見せるセンチ、優しさなど若いがうまい役者だ。むろんヒーローのソン・スンホンは監督のお気に入りだけあって、陰りをもつ人物ミンユをよく演じている。
 このドラマの脚本も「冬のソナタ」コンビのキム・ウニ、ユン・ウンギョンさんたちだ。語り口が似ている。愛しているということを暗示させるのに、ゲームで表すところなどそうだ。冬のソナタの場合尻取りゲームだった。夏の香りでは連想ゲームを使っている。これも韓国文化の伝統につながっているのかもしれない。言葉や文字を大切にする「文」の文化という意味だが。
 ユン監督の作品は現代的な風俗で描かれてはいるが、その精神は朝鮮の伝統文化に根ざしているように思える。

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# by yamato-y | 2005-02-23 13:27 | 夏の香りチェック | Comments(0)

大磯暮らし②

ツヴァイクの道

 我が家のあるモミジ山から麓までの道を、私はひそかにツヴァイクの道と呼んでいる。お気に入りの作家シュテファン・ツヴァイクに因んだのである。彼はザルツブルグのカプチーノ山に住んでいた。「サウンドオブミュージック」の舞台となった町である。20代の終わり、ザルツブルグへ行ってツヴァイク邸を訪ねたことがある。ツヴァイク自身、ナチに追われ亡命先のブラジルで自殺したからその邸宅の所有者は現在別の人物である。だが屋敷も庭も当時のままであった。深い緑に包まれていた。高い柵越しに静まる屋敷を見てツヴァイクの非業の死を思い私は胸がいっぱいになった。
 ツヴァイクは当時の流行作家で司馬遼太郎のような存在だった。歴史を題材にとった小説は無類に面白く、多くのファンをつかんだ。執筆に飽きると家の周りのカプチーノ山をツヴァイクはよく散歩した。その散歩道を辿ってみた。予想以上に文明が入り込んで車が往来していたが、この道で『人類の星の時間』や『マリー・アントワネット』、『権力と闘う良心』といった名作が生まれたかと思うと胸がふるえた。ツヴァイクは今も愛読書の一つだ。
 いつか家を建てることがあったら、山の上にと思っていた。現在、相模湾を遠望する
山上に住み毎朝山を下って通勤する度、あの思いがよみがえってくる。おこがましいがモミジ山をカプチーノ山に見立てたいのだ。
 今朝、ツヴァイクの道に陽光がさんさんと降り注いでいた。こういうときは、手のひらを太陽に向けて精一杯吸収するといいと、葉祥明さんから教わった。木々は芽吹いていた。
 大磯駅のフォームに立つと構内の桃の木があざやかな花をつけていた。

 夜行「冨士」 海辺の駅の 桃を過ぐ

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# by yamato-y | 2005-02-22 18:56 | Comments(1)


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