落合
一昨日のことだ。雨で濁流になっている妙正寺川のそばをぬけて、フジオプロに行った。
西武新宿線下落合駅から歩いて5分のあたりだ。番地をたよりにプロの建物を探して、川沿いでうろうろしていた。
橋がかかっていて、女の子とおばあさんらしい女性の二人がいた。何かを下の川に落としている。橋の柵の間から女の子が落としている。その背後でおばあさんが見ている。
突然、私の頭の上で大きな罵声が響いた。
「何をするんだああ。子供に悪いこと教えるやつがいるか」中年というか老年か、男性のだみ声の大音声だ。
女性は最初きょろきょろしていた。自分たちのことを言われているのではないと思っていたようだ。罵声がやまないので目をあげて声の主を確認したようだ。途端にそわそわして橋から離れようとする。女の子は怪訝な顔で女性を見上げるが、とっとと行こうとする女性のあとを追う。女性は目をそむけたまま女の子と手をつないで、反対岸のほうへ消えた。
おそらく、橋の上の二人は水かさを増した川に不法投棄していたのだろう。それを住民がみつけて叱ったというわけだ。女性の風貌はどこにでもいそうな穏やかなおばあちゃんという感じであったが、悪いことと見とがめられてから顔が歪んだ。
女の子の顔が心に残った。どこかで見たことがある。・・思い出した。
秋田連続児童殺害事件で、母親に殺害されたとするあの幼女に似ていたのだ。あの子とそっくりの女の子が橋の上でおろおろしているのを見て、胸が衝かれた。むろん、橋の上の二人がしていたことは悪いのだが、やらされていた女の子のあどけない表情に胸が痛んだ。
フジオプロの建物はすぐ分かった。入り口に黄金のバカボンパパの像があったのだ。
喪中とあって、事務所はひっそりと静まり人影が少なかった。担当のTさんと取材の内容についての打ち合わせを30分ほどした。2階にお骨を安置していますのでよかったらお線香をどうぞ、と誘っていただいたので、私はお参りした。簡素な机の上にお骨箱と写真が載せられ、周りには赤塚さんの生み出したキャラクターの図が所狭しと並べられていた。
私は生前の赤塚さんとは面識がない。こんな形でお目にかかるとは思わなかった。1本線香を手にとって火をろうそくから移し、台に立てた。ひとすじの青い煙が立ち上がっていく。合掌。
帰途、ふたたび濁流の妙正寺川のほとりを行く。落合という地名を思った。川の合流することを指すはずだ。後で調べたら、神田川との合流点だった。
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