先輩の死
昨夜、敬愛する先輩ディレクターのKさんが死んだ。72歳だった。
世間的にはまだ若いといえるが、テレビの世界では標準の寿命かな。結構みな早く逝くのだ。
Kさんは昔から体が丈夫でない人だったが、なんとなく細く長く生きる人と思っていたから、私の予想よりは5年早い死だ。
20年前、教育テレビの「ETV8」という番組を制作していた。10人ほどのベテランがそろっていて、私などは若造だった。
「ETV8」は番組制作局を横断する番組枠だったから、教養、サイエンス、洋楽、青少年などの各部のつわものが集まっていた。
そのなかで、Kさんは実力者だがけっして自己主張をしない控えめな人だった。社会の片隅にある物語を見つけて来て丁寧に構成する人だった。
Kさんは前職があり、夜間中学の教師であったという噂を聞いたことがある。本人からは聞いていないが、そういう仕事をしていた人かもしれないと思わせた。人間に対してけっして好き嫌いで判断しない。けっして激さない。穏やかな人柄だが信条は曲げない人だった。
鳥取の局に勤務したことがある。若いディレクターたちの兄貴格だった。若い制作者たちはすっかりKさんの魅力にまいった。みな、彼の影響を受けたドキュメンタリストになる。8人ほどのこの若者たちはK学校の生徒といわれた。今では、テレビ界の中枢たちだ。
ETV8時代の先輩たちがこの数年次々に亡くなって行く。急な訃報だから驚きはするが、意外なほど悲しみは少ない。なんとなく、私以上の世代には死は遠いところにあるとは思えず、そこにあるような気がしている。そんな気になったのは、1年ほど前からだ。
Kさんの通夜は金曜日。お別れに行こうと思っている。(しかし、今年私は何回葬儀に出席しただろうか。やや多いという気がしている)
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