リアルということ
詩人の佐々木幹郎がフィギュアについて面白いことを書いている。
原型師ボーメの作る美少女フィギュアはまったく別のリアルだという。足は異常に長く、髪も長いし風になびいている。顔も漫画的だ。これは、実際の女性の人体をモデルにしていない。アニメや漫画の2次元の世界を写し取り3次元化したものだからだ。
ボーメは「リアルなものを一回潰して、まったく別のリアルなものを立ち上げなくてはならない」という。現実の世界観を一回潰して出来上がっているのが、現代の我々の現実(リアル)だというのだ。
《誰でも飲めるはずの水がペットボトルで売られ、酸素が小さなボンベで売られている時代だ。生きるスタイルが、生を支える部分で「リアル」感を失っている。》
アニメのキャラクターなどはこれまでのリアルとは違う別の「リアル」ではないかと、佐々木は考える。
《アニメのキャラクターをモデルにした美少女フィギュアを見ていると、その立体のなかに不思議な「リアル」が、切迫感とともに息づいているように思う。》
そうなのだ。この不思議な「リアル」ということを、私はワンフェスの現場やフィギュアの展示している空間で味わった。別に動いているわけではないが、いかにもそういう仕草やマナーをするであろうということを、こちらに感じさせるようなフィギュア。
漫画チックな目にもかかわらず、こちらを凝視して意識しているような眼差しのフィギュア。
この3次元の対象(オブジェクト)を、テレビドキュメンタリーという2次元に還元して表現するのは、実に難しい。今、その点で苦しんでいる。
と、ここまで書いてきて、この原稿を担当のディレクターに読まれた。彼女が言うには、苦しんでいるのは私(このディレクターを指す)であって、プロデューサーのあなた(筆者である私)ではないとのこと。
そうだ。私は番組のクオリティを向上させるために叱咤激励するだけであって、実際にロケをして取材をして、主題の意味を考えるのはディレクターなのだ。そのディレクターが悩んでフラフラしているから、介助する私も苦しまざるをえないではないか。と私は抗弁する。
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