物語の作られ方
「冬のソナタ」の作者とは誰だろうか。ユン監督かシナリオ作家か、役者か、カメラマンか。この問いに対して、一応フィルムメーカーというペルソナだという内田樹案を与えておいて、第6話の「忘却」のエピソードから以下のことを考えてみた。
まず、6話のあらすじを思い出そう。
ミニョンと衝撃の再会を果たしたあと、ユジンは彼がチュンサンかどうか分からないままでいた。そして、機会があって二人は酒を飲むことになる。ユジンは酔いつぶれた。
ミニョンは仕方なくユジンを自分のホテルの部屋に連れて帰る。そこで、ユジンが自分をチュンサンと呼ぶのを耳にし、ミニョンはユジンが2面性をもつ悪い女かと疑う。チェリンの言葉どおり、ユジンが汚い手を使って親友の彼氏を誘惑しようとしているのだと考えた。やがて、ミニョンの部屋にユジンが来たことを知ったチェリンは罠を仕掛ける。
ミニョンとユジンは車で一緒に仕事場であるスキー場に向かうことになったが、二人の間に冷たい空気が流れている。ぎくしゃくした関係が進行するものの、運命は二人を近づかせるほうへと導いていく。戯れのまま二人が引いたタロットカードは「運命の輪」を示していた・・・。
このタロットカードという「小道具」はキム・ウニ、ユン・ウンギョンのシナリオ作家たちが思いつきかつこだわった。カードやパズルといったメタファーを配置しておいて意味を暗示するという手法が好きだったのだが、監督はあまり乗り気ではない。彼はストレートに感情を示すほうがいいと考えたのだ。そこで、両者は議論してようやく一部取り込むことにした。
タロットカードの布石は、この6話の最後に起きる木材落下事件があって効力をもつのだが、エピソードが飽和していたのでユン監督は、この落下事件を省こうとした。が、作家たちが懇願して実現したと『もう一つの冬のソナタ』(キム・ウニ、ユン・ウンギョン著)に書かれてある。作家たちは撮影現場で必死で知恵をしぼって物語のコンテを考えて監督に提示して、やっと了承を得たと告白している。
ここから分かることは、このドラマの大きな仕掛けは予め監督と作家達との間で合意されているが、各論では作家たちが具体的なイメージを提出し、それを監督が吟味して採用するという方法をとっている。物語の大きな流れはあっても、目の前の出来事の展開はすべての人にとって未知であったのだ。予定調和の流れにはなっていない。だから、このドラマは「生きていた」のだ。
シナリオはロケの現場で書かれて、当日に使われるという離れ業が、このドラマ作りのなかで行われるようになった。「撮って出し」と揶揄される韓国式ドラマ作りだ。
だが、こういうことは40年前、日本映画全盛にもあった。プログラムピクチャーを10日で1本作るツワモノがいた。その熱気がドラマに吹き込まれていたことがあったことを、私たちは思い出しておかなくてはいけない。
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