ユジンの苦悩そして予感
秋から始める「冬ソナ講座」のために、もう一度シリーズを通して見ることにした。今夜は第7話「冬の嵐」までとりあえず見た。あらためて、このドラマの出来のよさに驚く。
ユン監督の演出の卓抜さはこれまで何度となく言われているが、今回、映像編集の巧みさにも舌を巻いた。一言でいえば、「省略と余情」である。けっして映像が説明的に組み立てられていない。日本のドラマは文法通り、場面が変わるとそのシーンの場所性を示すロングショットを冒頭に置くものだ。ところがユンエディットはほとんど入れない。入れなくても場が変わったことが観客に理解できる。できるように撮影段階できちんと画に情報が書き込まれているのだ。この説明ロングを省略でどれほど内面の緊張が持続できているか。
余情はユンエディットの最大の見せ場だが、ここでは音楽のカットにまたがっていく手法が絶妙だ。しかも音楽は10足らずのパターンとなっているから、その音楽を聴けば、観客は自動的に悲喜が理解できる。
でも、そういう技術的なことに拘泥したくない。物語の語りのうまさに陶然とする。このドラマの主題は「運命の恋」。チュンサンとユジンは出会うべくして出会う関係であることが骨頂だ。内田樹氏も言う宿命の愛だ。それはシナリオにおいて、実に巧みに作りこまれている。二人のシナリオライター、キム・ウニとユン・ウンギョンさんの語っていることに耳を傾けたい。
その著『もうひとつの冬のソナタ』で、避けられる恋なら運命ではないという。
ユジンは、仕事の相手がチュンサンそっくりのミニョンだと知っておののく。運命的なものが近づいていると直感で知ったユジンは避けようと、その仕事から降りようとするが、運命は二人を皮肉にもさらに引き付けさせていく。しかもチェリンの悪意によって、ユジンは苦境に立たされながら、そのことが返って二人を引き寄せることになるのだ。
その自分の運命の流れにユジンは大きな不安を抱く。運命の愛が近づいているとユジンは婚約者であるサンヒョクにはとうてい言えない。言えるはずもない。
だが、第4話「忘れえぬ恋」の最後に、二人の関係性を知ったサンヒョクは動揺する。
ユジンが嘘をついたことに腹を立てたわけではなく、これからやってくるだろう運命の非情さを予感して動揺したのだ。
そうだ。避けようと努力して避けることが出来るぐらいなら、運命の愛ではないのだ。一直線に繋がるのではなく、禍福があざなわれて、運命は少しずつ二人をからめとっていく。
このドラマの良さを挙げればキリがない。今夜はここまでにしておこう。
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