定年再出発 |
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世界わが心の旅
「世界わが心の旅」というシリーズを作ったことがある。番組のテーマ音楽はむせび泣くようなヴァイオリンの切ない曲で、一度聞いたら忘れられない名曲だった。今も、衛星第2の午前中に再放送しているから、「名曲だった」と過去形で語るにはまだ早いかもしれない。 著名人が世界の各地に飛び、その地にまつわる自分を語るという旅ドキュメンタリーだ。1993年に始まり2003年まであしかけ10年続いた、衛星放送の看板番組だった。私は後半の1年余りを担当した。実際に現地まで出かけて撮影し編集まで関わったものから、編集に関わっただけのものまでおよそ20本制作した。 実際に旅に立ち会った作品は、オノヨーコとノルウェー、葉祥明とアッシジ、太田治子とオランダ、檀ふみとニューヨーク、堀江謙一とサンフランシスコ、などである。 かつて海外渡航ブームで日本人が世界に出かけた頃、この番組は大いに受けた。この数年の不景気で海外熱もやや冷めた観がある。番組が終了したのも当然かもしれないが、この番組がもっていたエネルギーは、私自身にとっても大きな力を与えてくれた。作品回顧とは別に、折に触れて「世界わが心の旅」のエピソードを語っていこうと思う。 檀ふみさんとニューヨークを訪ねたのは冬だった。かの地の寒さは東京に比べて圧倒的に厳しい。ダウンタウンを数分歩いただけでも寒気が体全体を包囲する、そんなかんじだった。ふみさんの旅はお父さんの足跡を辿る旅。父、檀一雄は「火宅の人」で知られる無頼派の作家。本当は太宰治らと文学を追求する真摯な作家だ。戦後流行作家として活躍する。実生活は文字通り火宅の人だった。というよりも人生を振り返ると、それは火宅――家がドタバタで混乱すること――以外なにものでもないと自己認識したのではないだろうか。 檀はある女優と恋に落ちる。ふみさんたち家族の元から愛人宅に通いつづけついには同棲するまでとなっていた。だが、ふみさんたち兄弟姉妹にはいい父だった。 やがて檀は女と別れ、家族を残して世界旅行に旅立つ。最初がアメリカで、ニューヨークでは長い逗留となった。彼は自殺未遂を起こす。顛末は小説「火宅の人」に書いてある。番組はこの出来事をふみさんが現地でみつめる旅としたのだ。 当初、檀一雄を世話したユダヤ人の秘書が出演してくれる予定であったが、高齢で体調がはかばかしくないという理由で断られた。予定が狂った。さあ困った。大事な証言者がいないのでは番組の骨格が崩れる。あれこれ考えジタバタ動いた。ますます混乱する。 ディレクターと私は知恵を振り絞った。挙句、檀が自殺騒ぎを起こしたホテルの一室にふみさんを「押し込めて」自分と父檀一雄のことを深く見つめてくださいと、引導を渡した。ひどい話だ。さすがにふみさんも眉を少しひそめたが、わかりましたと言って「火宅の人」1冊をもって部屋に閉じこもった。 翌日、部屋を訪れてカメラを向けたとき、ふみさんは実にすっきりした顔で、父の気持ちが少し分かった気がすると話し始めた。その話は感動的だった。むろん、この朝の撮影の数日前から檀の足跡をたどってニューヨークをふみさんが歩いたこともあって檀の動きを把握したからだろうか、ふみさんは檀の当時の苦悩をよく把握した。共感を示した。そして父と太宰の関係をてがかりに檀一雄の文学と正面から切りこんだのだ。 父のことを語るふみさんの表情は懐かしさにあふれていた。この時のサブタイトルは「父よ、ニューヨークの悲しみよ」。 今も時折ブラウン管で見るふみさんはケラケラ笑う明るい女優で、ニューヨークのあの表情とは格段に違う。でも父のことを語るふみさんは凛として美しかった。 私は檀一雄の最期の句を、今頃になると思い出す。もがり笛とは木枯らしのこと。花とはむろん桜のことだろう。 もがり笛 いく夜もがらせ 花に逢わん この句の碑は、檀一雄ゆかりの福岡の能古島に立っている。 人気blogランキング
by yamato-y
| 2005-03-02 15:02
| シリーズ世界わが心の旅
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Comments(2)
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