待ちましょう
ハリウッド映画「ボーイハント」を見たのは中学生の頃だから、今から40年以上前のことだ。男をハント(狩する)するという女たちの物語で、当時ずいぶん大胆な性典映画だと思われていたし、私も見るにあたりそう期待した。
ところが、実際に見てみると、悪い男に騙されて傷つく女子大生の話だった。期待は裏切られたが、内心ほっとしていたのはなぜだろう。フェミニストからは叱られそうな心情というか、女は弱く繊細なものだと思い込んでいたフシがある。
この映画の主題歌はコニー・フランシスが歌った。Where the boys areというリフレインが美しい。たしか、英語だけでなく日本語でも「待ちましょう、巡り合える その日を、静かに待ちましょう・・・」と歌ったはずだ。せつなくあまいメロディだった。日本人で歌うなら伊東ゆかりがよかったが、やはりオリジナルのコニーの「ボーイハント」のほうが心にしみた。
伊東ゆかりなら「バケーション」だった。V・A・C・A・TIONとパンチの効いた歌はよかった。この歌の歌詞で「マッシュポテトを水辺で、」という意味が分からなかった。潰したジャガイモって何だろうと首をかしげた。
湘南新宿ライナーに乗って大磯を目指している。漆黒の闇のなかを列車は轟轟と疾走する。窓の外に広がる暗闇を見つめながら、ボーイハントのメロディを口ずさむ。この映画の悲劇のヒロインはたしかイベット・ミメオだった。(週刊平凡ではミミューという表記もある) 妊娠が判明して呆然として雨の中をさ迷うシーンが忘れられない。あの女優は、その後「タイムマシン」などにも出ていたが、70年代に入ると見なくなった。どうなったのだろうか。
後にジャクリーン・ビセットが登場したときイベットが名前を変えたのかと思ったことがあるほど、二人はよく似ていたが。
この映画を見たのは、ある紡績工場の食堂だった。金の卵として集団就職していた女子工員の慰安のための映画会に私は友達といっしょに潜り込んだのだ。まわりはお姉さんたちばかりで、男は映写技師と私たちの3人だけだった。映画が終わって灯りがつくと私と友達はバツが悪くもじもじした。
あの頃アメリカは遠かった。フロリダなんて同じ地球にあるとは思えず、まさに地上の楽園に思えた。学生が休暇に友達同士で車で旅をするなんてことは夢のような話だった。あんな贅沢な暮らしが出来たらいいな、自分が運転する車で世界中を走り回ることが出来たらどんなに楽しいだろうと、帰り道友達と話し合った。
あのときの友達って誰だっけ。姿は覚えているが顔が思い浮かばない。つげ義春の漫画で顔が黒く塗りつぶしてある、あんな姿が浮かんでくるだけ。
♪ボーイハントを聴くと、そんな時代が甦ってくる。
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