kokodehasinanai
アキ・カウリスマキの新作「街のあかり」を見た。カウリスマキ作品ということもあるが、その題名に惹かれた。
もう一本アンディ・ラウのサスペンスを見たせいか、カウリスマキの造りがとても美しく感じられた。それほど優れた作品ではないが、ラウの映画があまりに虚仮威しだったので、
カウリスマキ作品がディーセントに見えたのかもしれない。
ヘルシンキで一番淋しい男の話だ。夜警だが同僚とも交流がない。というか、本人はなりたいと思うが、周囲が避けているようだ。少し偏屈なところはあるが、悪い奴でもなさそうなのに誰も近づかない。
そんな男の前に女が現れる。むろん、魂胆をもって近づいたにきまっている。女はマフィアの情婦だった。ボスから指示されて女は夜警をたぶらかす。彼のガードしているビルの宝石店の鍵を奪って、マフィアらは強盗を働くのだった。
夜警は罪をかぶせられたまま服役する。たった一人屋台のソーセージ屋の女が夜警の身を案じて、手紙を呉れたりもするのだが、男は冷たい態度しかとらない。
出所後、夜警は高級レストランの皿洗いとなって復帰する。
そのレストランに、マフィアとその情婦が来る。気づいたボスは夜警に前科があったことをレストランに告げたため、彼は解雇されてしまう。
そこまで、マフィアに貶められて、男は最後に果物ナイフをかざして、ボスに向かってゆく。
そのテロも失敗し、マフィアの子分らによって返り討ちを受けてしまう。ボコボコされてしまうのだった。
そうして、倒れている男のところへ、彼の身を心配してソーセージ屋の女が駆けつける。
そこで、男は一言。「ここでは死なない」
あらすじだけ記すと、任侠映画のように分かりやすい物語にきこえるが、カウリスマキの作品はそうはならない。この惨めな男の心中を静かに優しく抉っていく。
「ここでは死なない」はこのままでは死なないの意味かもしれない。こんなところで死んでたまるか、かもしれない。この弱い男の最後の一言がズシーンと胸に響いた。
どうしても、今夜、新作の映画を見たいと思った。せっぱつまったような思いでカウリスマキを見て、よかった。
しかし、カウリスマキの映画は音楽が懐かしいメロディが多い。今回の映画に、ロシア民謡の「灯」が出てきたときは、心が揺れた。
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