偉い人はえばらない
田沼武能さんと銀座で晩ご飯を食べた。田沼さんは写真家協会の会長で文化功労者の表彰を受けている人だ。
日本写真界の最長老だろう。私は先生と付き合いはじめて30年になる。そろそろ先生の仕事を記録をしたいと考えて、先生に会ったのだ。
元気だ。来月にまた国連ユニセフ大使の黒柳徹子さんといっしょにアフリカへ撮影に行くという。このユニセフの仕事だけでも25年続けているそうだ。
世界中のこどもたちを長年にわたって撮ってきた田沼さん。その作品は温かいやさしさに溢れていて、人柄を反映しているとつくづく思う。
中華料理をつまみながら、私はおよそ2時間にわたって取材した。先生はにこにこ笑いながら、一つ一つ答えてくれた。
驚いたのは、こどもの写真を撮影するために世界中を歩いているのだが、その経費はすべて持ち出しで行っているということだ。誰かスポンサーがいてバックアップしてくれているわけではないのだ。先生のようにドキュメンタリー中心の写真を撮っていると、広告のような商業写真と違って大きな収入があるわけではない。それでも、世界の辺境まで飛んで子供たちの笑顔を撮影してくることに、先生は命を懸けている。
アフリカの紛争区域を取材したからといって、現地の悲惨だけを押し出すことに抵抗がある、と田沼さんは語る。たしかに厳しい環境に子ども達はおかれているがそうではない一面もある、
輝くような笑顔の瞬間もある、ということを伝えたいのだと、先生は熱く語った。
2時間が、あっという間であった。年齢を感じさせない。先生が仕事についたのは私が生まれた翌年だ。
私が先生の年齢と業界歴の長さを冷やかしたら、「それを言うなよ、聞いたら自分でもがっかりするだろう」とにやにや笑いながら、それでも自信たっぷりにジョークを放つ。
たいしたものだ。やはり、斯界の権威ともなると違う。ぜんぜんエバラないのだ。
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