ひがんで悲哀
同年のアーチストから「あんたも、過去の作品を並べて、それを眺めながら死ぬまで生きていくのね」と嫌味というか皮肉を言われた。
かつて、いっしょにラジオのドキュメンタリーを作ったことがあって、そのときの録音を私は紛失したので、持っているかと聞いたら、こう言われたのだ。
むっとした。「もう電話を切るよ」
「あら、怒ったの、そんなことで。男らしくないわね」
用件があるといって電話をかけてきたのは、そっちじゃないか。その用件の礼を言うことなく玩物喪志と言わんばかりのいやみを言うとは不愉快。
ふだん、男だ女だという発想は差別的だと唱えているくせに、こんなときは「男らしくない」っていうのはどういう了見だ。これ以上問答無用。ガチャン。
因みに、「玩物喪志」とは物をもてあそぶことに夢中になっていると、だんだん「志」が失われていくという、謂。
そのアーチストはここ数年スランプでぱっとしなかった。正月の新聞に取り上げられてから少しずつ仕事が増えているらしい。2年前に電話をしてきたときは暗い声をしていて、「どうせ私なんかマイナーですよ」と僻んでいたくせに。なんだ、ちょっと売れるとこれかいと毒づいてやりたくなる。
話はずれるけど、テレビ番組の制作なんて、若くないと出来ないものだ。体力勝負、スタミナ、流行性感冒(世の中のはやりすたりばかり気にしていること)、狂想などがそろっていないと難しいものだ。とにかく、時代に関心が薄れると、途端に番組枠が減ってくるものだ。ここ2、3年、制作の本数だけみたら、全盛期の10分の1に低下している。
いきおい、映像よりも言葉のほうへと表現の関心が移る。こういうブログを書くのもその一つだ。
彼女が言う「女々しさ」かもしれないが、先ほどの皮肉も私が30代40代だったら聞き流すこともできたかもしれない。でも60になって言われると、それはジョークにはならない。同じ年なんだから分かるだろうに。
同じ年といえば、都はるみもそうだ。自死した彼女のパートナーも私もみな60歳。「歌い続けていくだけです」と健気なことを発言しているが、内心はどうなのだろう。本当に歌うだけでこれから幾十年も生きていけるのかしらむ。ちあきなおみも同世代、というか一つ上だ。彼女も沈黙して10年以上になる。どうしているのだろう。
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