2つの疑問
昔から、映画を見ていて不思議に思っていたことが2つある。
一つは時代劇の”切られた人”。主人公によってバッサバッサ切られる侍たちの人生だ。おそらく下級武士だろう。
悪い家老のとりまきでいて、大団円になると、まるで大根のようにスパスパ切られる。少なくとも二十歳を越えたいい大人だ。時には中高年となった者もいる。この人たちがまったく顧慮されずに斬殺されるのだが、この人たちだっていろいろ苦労があって青雲の志を抱いて成人したであろう。その生涯がこんなに簡単に紙より軽く扱われるということが理不尽に思えて仕方がなかった。
もう一つはラブストーリーのその後である。若い男女が苦難を越えて最後にいっしょになるというハッピーエンドの物語。
この後、二人はどうやって生きるのだろう。黄金時代が老人となり神が二人を分つまで続くとは思えないのだ。途中で飽きるなどは当然だし別れることだってあるじゃないか、と映画の終幕を見ながらいつも思っていた。
一つ目のことは藤沢周平を読むようになって、下級武士にもそれなりの味わい深い人生があると知って、なんとなく納得できるようになった。
二つ目のことは、昨夜なにげなく見たバラエティ番組から思い出した。若い男はフリーターだったが、今度仕事についた。それを契機に8歳年上の女性に結婚を申し込もうとしている。ところが、かつて喧嘩して男が2ヶ月間失踪したことがあって、その女性は結婚に対して踏み切れない気持ちでいるらしいと、男が番組に相談する。そこで、その男の思いを実現するために、大掛かりな仕掛けで女の心を捉えるような「夢」を作り出す。
最初は半信半疑だったのが、最後に男がエンゲージリングを差し出すと、女は大つぶの涙を流して「私はほんとうに幸せだ」と大泣きする。その間、若い男は本当にやさしい。自分の前非を悔いて「きっと幸せにするからね」と何度も告げる。
見ているうちに憮然としてきた。「神田川」の一節が浮かんで来た。
♬何もこわくなかった ただ、あなたのやさしさがこわかった
この歌は以前から悲恋を描いているとなんとなく思っていたが、その理由がやっと分かった気がした。(本当に鈍いな)
ラブストーリーの人生の結末はどうなるのか。これらのなかで、最後まで添いとげるのは幾組あるだろうかと、スクリーンのエンドロールを見ながら思ったものだ。
ただ、納得したケースもある。「ローマの休日」だ。身分の違いからいっしょになれるなんてことはないにしても、王女も新聞記者も遠い将来ふとしたときに、このラブアフェアーを思い出すこともあるだろう。そんな「想起」のなかに生きて行くことはあるだろうなあと思った。
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