冬隣り
今頃の時期は春隣だ。少し気分が高揚する語彙だ。
でも、冬隣りと言えば、それは秋。沈む思いだろう。その題がついた歌謡曲を昨夜からずっと聞いている。
ちあきなおみの「冬隣り」だ。you tubeで動画付きで聞く事ができる。
この歌の作詞は吉田旺。「喝采」の作者でちあきの歌をたくさん手がけている。この人はちあきの人生を予見していたのかと言いたくなるような詞を書いている。なかでも、この歌はそうじゃないか。
♬あなたの真似してお湯割りの 焼酎呑んではむせてます
つよくもないのに止めろよと 叱りにおいでよ 来れるなら
♩地球の夜更けはさみしいよ そこから私が見えますか
この世に私を置いてった あなたを怨んで呑んでます
♪写真のあなたは若いまま きれいな笑顔が憎らしい
あれから私は冬隣り 微笑む事さえ忘れそう
♫地球の夜更けはせつないよ そこから私が見えますか
見えたら今すぐすぐにでも 私をむかえに来てほしい
♪地球の夜更けはさみしいよ そこから私が見えますか
この世に私を置いてった あなたを怨んで呑んでます
この歌をちあきが吹き込んだのは1988年。韓国でオリンピックが開かれた年だ。日本もまだ元気があったから、こういうマイナーな曲は私の耳には届かなかった。
この歌から4年後、ちあきは最愛の郷鍈治を失う。喪失はちあきの歌の人生を奪った。まさに、その後の心境がこの歌ではないかと思いたくなる。
この歌を聴きながら、先般、人探しをしたことを思う。渋谷の居酒屋の女将のことだ。引退後、ご主人を亡くし、常連の中から姿を消した女将。
ようやく見つけて接触したとき、連れ合いを亡くしてからずっと泣いて暮らしてきたと、女将は語った。昔の客にも会いたくない、会ったらなんであの人だけがいないのだろうと思えて、悔しいから、誰にも会いたくない。こう洩らした。
♪地球の夜更けはさみしいよ そこから私が見えますか
この世に私を置いてった あなたを怨んで呑んでます
春はもうすぐそこに来ているのに、心を鎖す人もいる。
そのことを思いつつ、ちあきを何度も何度も聴いている。
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