巨匠たちのガチンコ勝負
本日は「闘う三味線」の英訳チェックに追われた。昨年の7月に放送されたこの番組は年末に2つの賞をいただいた。そういう弾みもついたのか、アメリカで開かれるコンクールにも提出されることが先頃決まった。そういうことで、今この番組の英語バージョンを作成する作業に入っているのだ。といっても、実際の作業は語学の専門家が行うのだが、本日は英語台本チェックに参加して、面白い体験をした。
作業に参加したのは私を入れて6人。局側の海外コンクールを担当するプロデューサーが二人。アメリカ人の翻訳者、男女の日本人ディレクター、そして私である。私以外はみな英語の達人だ。
私といえば、原版を作った者としてそこに立ち会っているだけで、英語表現のニュアンスなどとんと分からない。実際の作業は、アメリカ人がまず英訳したものをテキストとして、元の日本語バージョン比較検討が行われた。
アメリカ人の担当者はこの翻訳は、関西弁であること伝統文化であることという2重の壁があってかなり苦労したとぼやいていた。とはいうものの、上がってきた英語台本を見るとかなり完成度の高いテキストになっていた。
shamisenは海外でも通用する言葉だ。
「阿古屋琴責め」は最初torture by koto とあったが、これでは琴でなぐって責めるというようなイメージになると異議が出て、Akoyas koto tortureになった。
このへんの変更は感心して聞くしかない。
文楽の素浄瑠璃は人形を使わないで演ずるということで、without Puppets[人形無し]とされたのは、あっけにとられた。
「心中宵庚申」という文楽の名作の訳しかたは感心した。というか英語の表現に驚いた。
Chikamatsu play ,love suicides on the eve of the Koshin Festival
心中を,love suicidesと言うのか。suicideは自殺である。それにsをつけて複数形にしてあるのだ。さらに,love というのを修飾するのだ。
このデンで600近いナレーション、対話の箇所を英訳したもののチェックがおよそ4時間にわたって行われた。
最後に、番組のタイトルの表記をめぐって議論があった。原題は「闘う三味線 人間国宝に挑む〜文楽 一期一会の舞台〜」である。
最初の訳は、Aiming for the Top:A Shamisen player's Challennge としていた。その道の第一人者を目指して、というようなニュアンスだろうか。
もう少し、激しさが欲しいなあとつぶやくと、アメリカ人が「では、The clash of two titans 」とつぶやいた。
なるほど、巨匠たちのガチンコ勝負か。面白い。この案に私はのった。
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