文学者の死
評論家の川村二郎氏が亡くなった。80歳だという。ずいぶん長生きしたのだ。
私は20年前にこの人にインタビューしたことがある。当時、氏は都立大学の教授であった。東横沿線の下町にある彼の自宅で話を聞いた。
ものしずかな、やさしい声で話す人という印象しかない。
後年、大学を退いてからの活躍はめざましいものがあった。しかも、批評は鋭く、容赦のない攻撃を加えるものであった。私が会った人物からは想像できなかった。
大学の研究者の頃は、ドイツ文学を中心に仕事をしていたと思うが、フリーとなってからは日本の古典に深い造詣を示すようになっていた。
私が氏にインタビューしたのは、芥川賞・直木賞100回という記念番組だった。直木賞は二人の女性ということで話題を呼んだが、芥川賞は誰だったか忘れている。
直木賞の一人は九州にいる杉本章子だった。彼女は大学を出てまもない頃でまだ若かった。今も存命で活躍している。
この両賞を語るのはこの人以外にないと言われたのが、文壇のご意見番永井龍男だった。当時鎌倉に住んでいた。自宅を訪ねて話を聞いた。
朝早く着いたので、しばらく待たされた。30分ほど時間が流れたので、どういうことかなと思って、奥まで入った。そこで頭を梳かしていた永井と目があった。
カミナリが落ちた。
永井龍男も先年亡くなった。
あの番組に出演した文学者はほとんど物故した。九州在住作家、白石一郎も審査員だった藤沢周平もみな他界した。
そのなかで川村氏は長命だった。
余談だが、白石の双子の息子の弟は白石一文で今の流行作家だ。時代は回る。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング