グランドフィナーレ
昨年の8月21日に最終回を迎えたNHK総合テレビ「冬のソナタ」は20・6㌫という驚異的な数字を記録した。1千万近い人が魅了されたのである。このドラマはこれまでに衛星で2回放送されていて「新品」ではない。韓国ドラマで放送が深夜で、しかもオリンピックの最中と厳しい環境にもかかわらず、この快挙となった。
春から「冬のソナタ」を総合テレビで放送を始めるので、特集番組を作ってほしいと依頼されたのはまだ寒さが残る1月だった。入社以来34年、ドキュメンタリー一筋の私としてはメロドラマのキャンペーンと知って面食らった。まもなく定年となる私の前に純愛をテーマにしたドラマが現れたのだ。特番作りの参考にと全20話をビデオで視聴して、浅薄な私の認識が打ち砕かれた。このドラマは単なる純愛を描いているわけではない。自己犠牲という愛のテーマを丁寧かつ誠実に見つめていた。現代の日本人が忘れてきた多くのものがあった。心に残る言葉、懐かしく美しい風景、切なくも美しい生き方――大勢の人の心を掴んだ秘密が分かった気がした。
私は特番制作に本気になり、韓国へ飛んだ。ヒロインのチェ・ジウを引っ張り出すことにしたのだ。3月初旬チェさんの初来日実現。こうして「冬のソナタへようこそ」(3月27日放送)は生まれた。日を置かずに今度はヒーローのぺ・ヨンジュンが来日。すぐに「素顔のぺ・ヨンジュン」(4月30日放送)という特集を不眠不休で作った。世の中にヨン様、冬ソナという言葉が飛び交うようになる。 ドラマの本放送が始まった。視聴率は5月に入ると2桁台に突入ぐんぐん上がっていく。冬ソナは社会現象になり始めた。
そして最終回を迎えたのである。熱いファンレターが続々と届く。このドラマによって救われたという便りや青春を取り戻したという声やメールが係に2万件以上寄せられたのである。生真面目なファンたちを私は密かにソナチアンと名付けていた。――ソナチアンの熱い思いを見過ごせないと、特別番組が計画される。またしても制作担当は私となり、思い切って公開番組のイベントを企画した。8月28日、NHKホールに三千人のソナチアンを集めユン監督や脚本家を招いて、「冬のソナタ・グランドフィナーレ」が開くことにしたのである。観覧希望の葉書が2週間で8万通届いた。当日会場は熱気につつまれた。テーマ曲に聞きほれ、名場面に涙ぐむソナチアンがあちこちに見られた。登場したユン監督をじっと見つめるソナチアンがいた。
グランドフィナーレの最後にユン監督は、このドラマを通して日本人から大きな感動というプレゼントをもらった、これからも両国の交流のために力を尽くしたいと顔を紅潮させて語った。2005年の今年は日韓条約40年という節目で「日韓友情年」にあたる。
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