アテネの滅亡
偶然、手にした本だがめっぽう面白い。今夢中だ。
『誰がアレクサンドロスを殺したか』(岩波書店、2007年4月)だ。
われわれの世代ではアレキサンダー大王として知られる人物の死をめぐる「ミステリー」だ。
大王はマケドニアの出身で、アリストテレスを家庭教師として帝王学を得て、西はシシリアから東はインドまでの広大な版図を作り上げた英雄だ。
ところが33歳の若さで急死している。古来、此の死をめぐっていろいろ取りざたされているが、著者はある書物に毒殺と書かれてあるのを読んで、この死を追求しはじめるのだ。著者は日本人だ。しかも歴史学者でも作家でもなく、医者なのだ。広島大学名誉教授、難波紘二。経歴を読むと、広島大学で医学を修め、アメリカのNIHに留学までしている。NIHとはたしかアメリカ保健局のことで、医学の最先端を研究する組織だ。おそらく、原爆の後障害の研究ではなかったのだろうか。著者の専門は血液病理学とある。
だいたい、西洋の古代史の本というのは名前と地名が複雑でなかなか読み進めないものだが、この書は違う。とにかく、ギリシャ、ヘレニズム世界だけで構成されていない。歴史現象を日本の特に現代日本の事象に引き寄せて書かれてあるから、イメージが生き生きしてくるのだ。アチャラ本を読んでいるというより、時代小説を読むような気がしてくる。
このところ、西洋哲学史の本を続けて読むことがあった。そこで批判されていたのがプラトンによる形而上学の伝統であった。それがハイデッガーやデリダによって批判されたという記述を読んで、その意味がいまいち納得できないでいた。
たまたま手にした此の本の目次に、プラトンの恋とかソクラテスとあったので、かいつまんで読んでみると、たちまち内容に引かれたということだ。
最後まで読まないとしっかりしたことは書けないが、こういう「小説」というのは斬新だ。
塩野某のローマものなどは、食わず嫌いかもしれないが、あまり読む気がしない。が、本書は
ホーヴィングの「謎の十字架」と同じくらいの面白さだ。
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