咲く花に
もみじ山を降りるとき、白いものがちらついていた。
本日も高崎線で事故があって、湘南新宿ラインは運休した。昨日もそうだったのだ。
このところ大宮から高崎で事故が多く、余波が湘南ラインに及ぶ。仕方なく東海道線の満員電車で上京。
渋谷駅から会社までの道で、沈丁花の堅いつぼみを見つけた。そこに小雪が降っている。
ある人の句を思い出した。
咲く花に姿正せと小雪舞う
この句を作ったときのことを作者が書き残している。それによると。
作った場所は、金沢の卯辰山頂の公園である。時は3月、早春とある。
桜のつぼみに時期外れの小雪が降ったのを見て、この句を作ったそうだ。
作者は、岩波書店の前社長、安江良介さんだ。安江さんは書をよくし、句も詠んだ。
この句は出来がいいとは思えないが、いかにも安江さんの生き方を表していると感心した。
花が咲きそうになって一つの完成が近づいたときに、雪が降って、もう一度つぼみからやり直せと言わんばかり。もしくは、咲き誇る前に再度自己を点検して、揺るぎはないか、驕りはないか、誤りはないか、を見つめろという謂ではないだろうか。
戦後民主主義が幾度も困難に遭遇したとき、たえず励まして道を切り開いてきた安江さんの生き方を彷彿とさせる。
安江さんが死去して、青山の葬儀所でお別れの会が行われたときも雪が降った。東京には珍しい大雪だった。金沢生まれの安江さんにふさわしいと思った。この時、弔辞を読んだのは、坂本義和、大江健三郎、池明観の3氏だった。
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