通夜の客
川崎、臨海地帯にある斎場へ行って来た。駅からタクシーで20分ほどかかる。ずいぶん遠い所だが、故人は一次定年したとはいえまだばりばりの現役だったこともあって、おおぜいの参列者が集まった。7時から始まる通夜の予定が、たくさんの人が集まっているということで30分繰り上げて始まった。懐かしい先輩たちの顔が見える。こういうときにしかお目にかかることもない顔がいくつもある。当たり前だが、皆老けている。
故人の死の原因は寿命とはいえないものであったから、参列する人の表情も沈鬱で、話し声もほとんどない。
お参りを済ますと早々に立ち去ろうと思ったが、出口でHさんと出会いいっしょに帰ることにした。川崎駅前までマイカーで来た人に送ってもらった後、敬愛するHさんと二人だけの精進落としというか直会をやろうということで、駅ビル10階の居酒屋へ入った。
Hさんは、月のうち半分以上、山梨の山の家に住んでいる。昨夜、訃報を聞いて今朝山から駆けつけたという。今夜は川崎にある本宅に帰るということで、ケツカッチンを気にせず、腰を落ち着けて飲むことができた。
その席では故人の話はあまり出ず、もっぱら、第2の人生の生きがたさ、楽しめる方法をめぐって意見を交わした。というか、私は、Hさんが実践している悠々とした「お一人様の老後」について教えてほしいと思っていたのだ。
今年は源氏物語1千年ということで、山の近所の人たちと源氏講読を始めたので、月2回行われる例会を予定の中心に置いて暮らしていくと、Hさんは楽しそうに語る。人柄の暖かいHさんはどこへ行っても声がかかる。有徳の士だものなあ。すべからく、Hさんは住民からも地域からも愛されていると思う。
少し意地悪を言いたくなった。昔から、死ぬなんてことを考えたことないでしょうと、挑発したら、「そんなことを、あなたは思っていたの。だとしたら、よほど、あなたは恵まれてきたのね」とぴしゃりとたしなめられた。
この人といると、つい私は甘えてしまう。とにかく二人だけの直会の酒は楽しかった。故人を偲ぶことは少なかったが、まあ、こんな直会もいいかもしれないと、大目に見てくれるでしょ、天国のSさん。
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