福島正実と大伴昌司
21日に放送した「21世紀を夢見た日々~日本SFの50年~」は、今静かに反響があがってきている。なにはともかく無事放送できたことが嬉しい。
この番組は二つの魂に捧げたいと、私個人は考えていた。福島正実と大伴昌司である。この日本のSFの礎を築いた二人は長く等閑に付されてきた。いささか不当だと思っていたので、この二人の名誉を回復しておきたいと思ったのだ。
この二人の人生を思うとき、じつに愚直でぶきっちょな生き方と断じざるをえない。しかもこの人たちが今も生きていたら、煩いじい様になっていただろうなあと推測する。
しかし、この二人のSFに対する態度は正反対であった。福島は文学としてのSFを確立しようと、純文学に対抗の炎を燃やし、漫画やアニメに対しては冷淡であった。
一方、大伴はSFのビジュアルティに注目して、児童文化からSFのマインドを広げてゆく戦略をとった。
当初、福島が庇護する形でSF作家クラブの実務を大伴に任せていたが、次第に路線が違うことを認識し互いに遠ざかるような生き方となっていった。
しかし、大伴は1973年に36歳で、福島は1976年に47歳でこの世を去っている。早い。
昨夜、映画「ドリームガールズ」を見た。あの女性3人グループ、シュープリームスの伝記映画だ。貧しい少女たちが億万長者になるまでの苦悩を描いた佳作だった。そのラストシーンで、3人の引退の公演で、リーダーのディーナ(ダイアナ・ロスがモデル)が「私たちは本来は3人でなく、4人だったのです」と引退してショービジネスから去っていたメンバーを紹介する。感動的な場面だ。
この場面を見ながら、私は福島と大伴の二人を思った。今、世界の文化現象に大きな影響を与えている「日本のSF」の幼年期に、この消えていった二人がどれほど力を尽くしたことか--。
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