トモさん降臨
制作中の「21世紀を夢見た日々~日本SFの50年~」はようやく最終コーナーに入りつつある。思えば、長い道のりだった。6月から始めたのだから、まる3ヶ月はかかっている。久しぶりのディレクターはいろいろなことを体験させられた。
その一つが、トモさんこと大伴昌司氏のアトリエでのロケだ。トモさんは1973年に亡くなっているが、仕事場はそのまま保存されている。彼が怪獣博士としてさまざまな怪獣の解説を描いていた頃のまま、部屋にはデスク、テーブル、テレビ、映写機、パルプ雑誌、などが残されているのだ。まるで、SFやミステリー、ホラーの資料館のようだ。そこを今回の番組では利用させていただいた。
SFの歴史の流れを陳列して、番組のキャスターの1人栗山千明さんにリポートしてもらう場にしたのだ。
今月の18日のことだ。朝一番にアトリエに入り、撮影を行った。前日に飾りこみを終えていたので、カット数は20を越えたがスムースに予定が進んだ。いつもは眠っているアトリエも久しぶりにおおぜいのスタッフが入ってにぎやかで、かつ栗山さんのアンドロイド姿が華やかであった。10時にシュートを開始して正午までの2時間を予定していたが、実に段取りよく進んだ。
が、不可思議なことがあった。照明のライトが3度ショートした。照明さんが「こんなに頻繁に電球(たま)が切れるなんて」と首をかしげる。私は直感した。「あ、オートモさんが来ているな」と。彼がときどき降臨することは少年マガジン元編集長から聞いていたし、20年前に同じこの場所で、私が撮影作業していたときにも体験したから、トモさんの仕業にちがいないと思ったのだ。今回の照明さんは、かつて円谷プロが制作した「ウルトラQ」の照明補助を担当した経験をもつ人物であったこともフシギな縁だ。
そんなアクシデントがあったにもかかわらず、スケジュールは滞りなく進み、12時過ぎにはロケがあがり、部屋の撤収を終えてロケバスで放送センターに戻った。昼からはスタジオでの撮影になっていたのだ。
412スタジオに入ったときだ。大伴邸から持ちかえった資料を広げて並べようとしたときだ。その包みの中から、トモさんの部屋のクーラーのコントローラーが出てきたのだ。誰がこれを入れたのか分からない。まるで、ついて来たかのようにコントローラーは澄ました顔で資料の間に鎮座していた。
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