天花粉の思い出
夏が終わりつつあるが、昔の夏の思い出を書いておこう。
消夏という言葉がある。暑い日本の夏をどう送るかということだ。
今ほど、豊かでなかった時代を私のような世代は最後に体験している。内風呂がない時分、銭湯へ通ったものだ。夏になれば行水というのを浴びた。たらいに入れたお湯を浴びる、夏の習慣だ。少ない湯を使って頭から体まで全部洗った。たらいの中の湯が熱いところがあったり温かったりまちまちだった。それでも、夕方行水を浴びた後はさっぱりした。
その頃の風物といえば、団扇、蚊取り線香、蚊帳、床机、花火、浴衣と並んで、行水につきものは天花粉だった。湯上りの体に、特に首筋に白く塗りこむのが、汗知らずの天花粉、シッカロールだった。
行水を終えた子ども達が白い天花粉まみれになって、表の床机に駆けつけて怪談などを聞くというのが庶民の消夏法だった。野外映画の上映会などがあったりして、せっかく湯を浴びたものの、映画から帰って来るとまた汗まみれということも少なくなかった。
天瓜粉しんじつ吾子は無一物
この句は現代の名手、鷹羽狩行の作だ。
うちのこどもたちが小さい頃は、湯上りに天花粉をはたいてやると、まるで餅を粉でまぶしているような気がした。日野草城の句がいい。
天瓜粉打てばほのかに匂ひけり
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