この暑さとSF
SFは荒唐無稽、子どもの喜ぶものという偏見は、私にもあった。これまで、星新一、小松左京、筒井康隆というSF御三家の作品はもちろん、眉村卓、光瀬龍、広瀬正、豊田在恒、平井和正といった作家たちの作品もほとんど読んでいない。
今回制作している番組のテーマがSF作家の45年ということで、必要に迫られて少しずつ読むうちに私の偏見は修正されていくこととなる。
いわゆるリアルな文学にばかり重きをおいて私は読んできたのだが、考えてみるとこの種の文学というのは個人の思いや考えを見つめたり検討したりするには相応しいが、人類とか文明といった壮大なものを表したり対象にしたりするには弱い。
SFのジャンルの中に未来論というのがあって、小松はとくに60年代後半さかんに、SF文学の域を越えて社会に向かって提言したこともあるほど、SFは文明批評に対して熱心だということを私は知った。
未来論というと、科学技術が発展してノーテンキなばら色の未来を描くように思われるが、SF作家たちはかならずしもそうではないということも、今回の番組作りのなかで知った。
むしろ逆で、未来において文明の危機が起こるかもしれないという、未来の予想より予防を心がけて書いているのだと、いみじくも小松、筒井、石川喬司の3氏は口をそろえて語った。
昨日、石川さんと電話で話していて面白いことを聞いた。石川さんは競馬評論家としても有名で週末はかならず競馬場に顔を出す人だ。彼によると、今週末は競馬に出走しない馬が20頭近くあるという。夏のインフルエンザにかかったとのこと。前代未聞らしい。30年前に冬にインフルエンザが流行ったが、それに懲りてJRAではワクチンを投与してきたがまさか夏のインフルエンザがこれほど蔓延するとは予想しなかったようだ。
この出来事といい、世界各地で動物に異変が起きていることといい、今夏の異常な暑さと関係があるかもしれませんねと、石川さんは静かに語る。
それを聞いてはっと思った。たしかに、この暑さの異常さは生態系を狂わせているかもしれない。北極の氷がすごいスピードで消滅しているということ。これらは全て現代の大量のエネルギー放出によるものかもしれない。その一番の原因は化石燃料によるCO2の大量発生によるのだろう。まさに私達が便利だとしている科学技術文明のツケかもしれない。
筒井さんがインタビューで語った「人類は滅亡するというのは、ずっと私が言ってきたことです」という言葉が遠い話には思えなくなってきた。
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