青梅の臀(しり)美しく
梅雨の盛りだ。湿気がひどく、少し動けば汗ばむ。この季節の句を久しぶりに拾ってみた。
まず先日物故した飯田龍太の句から。
山の木に風すこしある薄暑かな 龍太
風なのか、それとも木自身が身震いしているのではないだろうかと思うほど木が揺れているのをツヴァイクの道で見た。風がないのにその木だけが揺れていたのだ。盛んに成長するため地下水をくみ上げる木がその運動でかすかに揺れているのではと思ったのだ。冬場はないが緑が濃くなるこの時期に多いと思えてならないが。甲斐の山中にあった龍太はさすがによく見ている。
私のまったく知らない俳人の句だが目にとまった。
どくだみの花の白さに夜風あり 高橋淡路女
梅雨に入りどくだみはますます生気を帯びている。庭一面にはびこるどくだみは腹立たしい気もするが、一方その一途さも無視できない。その名と違ってどくだみの花は白くて可憐だ。暑いといっても夜になるとひんやりするのが梅雨だ。夜目をこらすとどくだみが一面にある。
最近は見たことがないが、梅の実はなっているのが美しい。柔毛がうすくびっしりついた形のいい実は惚れ惚れする。青梅というと地名になりそうだが、この時期の梅を食すと腹をこわすと年寄りから言われたことを思い出す。犀星の句を見つけた。
青梅の臀(しり)美しくそろひけり 犀星
青梅から連想したのだが、永井龍男の名作「青梅雨」がある。こんなじとじとする時期に起きた一家心中をあつかった小説だ。たしか舞台は藤沢だったと思う。湘南ライナーで夜帰るとき、渋谷の次は藤沢で停車する。夜9時、閑散としたホームに雨が吹き込んでいるのを見ると、永井の小説を思い出す。
今日はこれから京都へ向かう。前期の映像メディア論も今回で終了する。3つのチームが番組を制作していて、明日が発表会となる。それぞれどんな出来になっているのだろう。楽しみと不安が半々だ。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング