福島正実編集長
「SF幼年期の、終わりに」という新しいブログ項目を立てた。この関連で書く記事が今後増えるだろうと予測したから。
新しい番組が動き出した。10月放送予定で「21世紀を夢見た」(仮)を制作することになった。久しぶりに、というか25年ぶりにディレクターをやることになった。私の場合プロデューサーといっても現場に出向いたり編集にちょっかいを出したりで、ディレクターと変わらないと陰口をきかれているのは知ってはいる。でも正式にタイトルでディレクターと明記されるのは25年ぶりだ。といっても、若いO君もサブのディレクターで入るのだが。
さて、SFファンなら「SF幼年期の、終わりに」というのを見ればニヤリとするだろう。SFの巨匠アーサー・クラークの代表作に「幼年期の終わり」がある。それをモジッたのである。この名著の翻訳は福島正実で、「SFマガジン」の初代編集長だ。
昨日、経堂の福島邸を取材陣三人で訪れた。むろん、福島本人は1976年に死去していて、むかえてくれたのは次男の加藤まさしさん(ライター)だ。表札は亡くなった当時のまま福島正実となっていた。
応接間に通されると、福島が撮影収集した写真のアルバムが20冊近く積み上げられ、彼のゆかりの録音や記録が整然と並べてあった。加藤さんの誠意に感謝する。同時に、父を思う加藤さんの心がよく分かる。
日本SF作家クラブが結成された1963年の前年からアルバムを拝見した。家族の写真も混じっているが膨大なSF作家たちの肖像がそこにはあった。小松、星に混じって大伴の「ひょうきんな」表情もあり驚く。かれこれ2時間ほど福島邸にいて、遺品、著作の数々を見せていただき、帰りしなに幾品かの資料を拝借した。その中に、福島正実の遺著となった『未踏の時代』があった。
昨夜から『未踏の時代』を読みつづけている。福島は1929年に生まれているから大伴より7歳年長だ。早川書房に入社して日本で初めてのSF雑誌「SFマガジン」の初代編集長を7年間勤めている。文字通り、幼年期のSFを牽引した人物の一人だ。あの日本SF作家クラブを結成しようと口火を切った張本人である。彼の功績は大きい。
にもかかわらず、今巷で福島の名前を聞くことが少ない。先日行われた作家クラブ45年パーティでも残念ながらその名前が挙がらなかった。というのは、福島の圭角多い性格がさまざまな誤解をSF関係者やファンに与えたようだ。
だが、今回『未踏の時代』を読んで、私は労多くして報われることの少なかった、福島のSFへの献身に心うたれた。同時に、党派意識がつよく召命感あふれた不器用な福島の生き方にせつなさを覚えた。これから福島に言及することが多くなると思う。大伴昌司とはまた違った意味で、SF文化に殉じたこの人物のことをもっともっと知りたい。
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