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最後のレシピ

最後のレシピ


昨夜、友と酒を飲んだ。同年の友だ。アーティストだから頑固なところはあるが、普段は温和でもの静かな人だ。その友と黄昏の恵比寿で会って、ショットバーでギネスを飲んだ。最初は仕事の話だった。2杯目のビールをお替りしたところでプライベートなことを少しずつ話した。立ち飲みのバーだったので場所を変えることにした。向かいに「香港食堂」の看板が出ていたのでそこへ入って、飲みなおした。

その友達は、先年、奥様を亡くした。10年前だったから、同級生だった妻はまだ40代後半だった。亡妻のことを口下手な彼はぽつぽつと話し始めた。

妻とは21歳のとき、大学在学中に結婚した。むろん双方の両親は早いと反対したが、そんなことはおかまいなしだった。夫は修業中の身の上だったから貧しかったが、それなりに楽しい家庭を築いた。二人の娘も生まれた。妻は小さい頃から美味しい店に連れてゆかれたこともあって、自身も料理が得意であった。聡明な人だった。
突然、難病が彼女を襲った。

死期が近づいたとき、厨房に入ったことのない夫にうまいご飯の炊き方と美味しい味噌汁の作り方を2ヶ月かけて教えた。夫は短い期間にもかかわらず必死で覚えた甲斐もあって、腕をめきめき上げた。今では、そのとき習った方法を応用して、この2品だけでなく他のレパートリーも増やしている。

娘たちは思春期をむかえていた。上は高校生、下は中学生だった。
その二人にも母は料理の仕方を教えた。教える頃には体はすっかり弱っていた。病は全身に広がり、顔には死相が現れていた。目の回りは黒ずみ、パンダのそれよりも大きな染みが広がっていた。

夫も妻も日大の演劇科出身だったので、映像関係の友人がいた。その友人に頼んで、妻は娘への家事のレクチャーを映像で遺した。それを撮り終えて2ヶ月もしないうちに彼女は死んだ。

この話は誰にもしたことがないが、今夜急に語りたくなったと友は言ってビールをあおった。彼は、その映像をはじめしか見られず最後まで見たことがない。

映像はタイトルも音楽も語りも何もない。 最初の画面、寝間着姿の彼女が現れる。精一杯の笑顔を浮かべて。彼女には死に対する恐怖より残されて行く娘たちに言い残したいという思いのほうがはるかに強かったと思われる。なんとか娘たちに怖がらせずに伝えたい、と満面の笑みを浮かべている。それが痛々しくて見ていられないのだと友人は語った。

その母は痛みで崩れそうになる態勢を必死でこらえて料理の仕方、家の片付け、家事について語るのだ。この撮影された映像が後に娘たちがどう見たか、友人は知らない。このことに関して娘達と話したことがないと、友は青島ビールのグラスをつよく握った。


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by yamato-y | 2007-06-19 00:02 | 登羊亭日乗 | Comments(0)
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