未来から見る
1963年に日本SF作家クラブが誕生する。星新一、福島正実、小松左京ら20名ほどが集まって、SF作家たちの交流と研鑚をはかったのだ。黎明期の作家たちはとても仲がよかった。二月に一度ほど集まり小旅行や意見交換を重ねた。
このメンバーの数人は、未来についての座談会を数回行っている。世話役は2代目事務局長だった大伴昌司。彼は少年誌やコラムのネタとしてもこの座談会を活用したと思われる。
その「未来学」の一部を大伴がメモしていたので、それを紹介する。出席したのは、小松左京、星新一、平井和正、大伴の四人だ。基調の意見はほぼ小松がリードしていた。
子育て、教育の未来予測について。
子育ては、社会が行う。受精卵としてこどもは作られ、3ヶ月で母体の体外に出され人工子宮によって育てられたり、人工早産で7か月で強制的に生みだされて未熟児箱に入れられたりする。これであると母体に負担が少なく、年に数回生むことができる。
生まれた子どもは3年保育にする。母親が育てるというのは社会的慣習なのであって、子どもは誰が育てても原則いいはずだから、社会が育てるのだ。ソシアル・マザーという存在が重要になるだろう。
だが、こういう流れの反動として、子どもを家庭に取り戻せという運動も起きる。
学校教育については、ずいぶん楽観的だ。
教育の格差をなくして平等主義が中心、全体のレベルは上がるがアインシュタインのような天才は出なくなる。高等教育の大衆化を進めている米、ソ、日本のような国は活力が出るだろう。
テレビ式ティーチングマシンが発達し、2歳ぐらいから勉強するようになる。
学校は、そこに入ること自体が教育になるというので、全寮制とし集団生活を学ぶ。
勉強は娯楽の一種となり、考古学ファンのように、道楽としての勉強が強まる。
記憶剤が開発され、一瓶飲めば百科事典をすべて覚えられる。
辞書はいらなくなって、エレクトロニック・ライブラリー・センターが設立される。知りたい項目のボタンを押すと、テレビに映ったり、ファクシミリで情報が送られてくる。
同様にビデオサービスが全国化して、全国アニメーション・ライブラリーも出来る。これを利用すれば、「朝から鉄腕アトムも見ることができる」
今から40年前のSF作家たちが考えた未来の一部だ。実現したものもあるが、残念ながら子どもを取り巻く環境は彼らが考えていたよりもずっと悪化してしまった。
こういうことを語っていた時代は、未来が明るく思えたのだ。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング