クロサワのドキュメントを見て
数年前、国際共同制作した黒澤明の伝記ドキュメンタリーを見た。
黒澤の第一回監督作品「姿三四郎」から順を追って作品論を展開してゆく、これといった芸のない番組だ。
ただ、かつて黒澤自身が語った映像を頻繁に使っているので、彼の本音が分かって面白い。
それにしても、赤ひげ以前の黒澤映画は充実している。それに比べて「トラ!トラ!トラ!」以降の作品の弱体化は何と言っていいか分からない。
「七人の侍」のエピソードは書物では読んで、知ってはいるが、実際に助監督だった堀川弘通、スクリプターの野上照代らから直に語られるといかにもありえたと納得する。
3ヶ月の撮影スケジュールが四倍以上の一年かかったというエピソードは、奇跡としかいいようのない。よく、これに東宝当局は許可を与えたものだ。私などは番組予算で百万円も赤字が出たら右往左往するのに、映画会社というのは太っ腹だったのだな。
黒澤が世界の古典を読みこんで人物像を学ぶべきだと言った言葉には共感した。
彼の作品にシェークスピアやドストエフスキーが反映されているのは有名だ。もう一つ、シナリオを立てるとき無声映画だったらどう言う具合に画を組み立てるかを考慮する、という手法は今でも十分通用する手法だ。
だが、黒澤映画の役者の素晴らしいのは、今見ていても感じる。
三船敏郎、志村喬、宮口精二、加東大介、木村功、・・こういう役者がいなくなった。
「酔いどれ天使」だけは見ていない。これを早急に見なくては。
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