3人の帰国子女
昨夜から神谷美恵子と須賀敦子を交互に読んで感銘を受けている。
二人に流れるカトリシスム、フマニスム。日本人には少数の考えだが時代を超え空間を越えて伝わるものだ。この二人のうち、須賀さんとは実際にお会いして親しく話しをさせてもらったことがあるが、神谷さんはない。私が物心ついて青春をむかえる頃にはこの世を去っていた。
もう一人の帰国子女も気になる。1年前に亡くなった米原万里だ。亡くなってから彼女の著作が続々と出版されている。この人はロシア語通訳ということで活躍していた頃から、間接的に知っていた。豪快な女性で知的でかつ猥談好きというのは、ロシア語の語学番組の担当者から聞かされていた。
そのうち、エッセーをものして次々に発表をはじめ、挙句文学賞を受賞するにいたる。私は彼女を引っ張り出して番組を作ってみたいと構想しながら、ずるずると機会を失した。私とほぼ同年の彼女がまさか死去するとは思ってもいなかった。
米原さんと須賀さんの共通は大人のユーモアを巧まずしてもっていたことだ。なにげない会話でも途中くすりと笑いたくなるような言葉が二人とも端々にあった。
こういう優れた「現代女性」をとらえるような番組を作ってみたい。
現在メディアに登場する人たちの顔があまりにみすぼらしくて苦しいのだ。
さて、この3人を帰国子女という大雑把な括り方をしたが、若い頃西欧と出会った人格というのはこの国の陰湿なクリマからある意味解放されているのではないだろうか。
この記事を書いて、「文楽」の編集試写で2時間席を外れた。その間に、思い出したことがある。
センター内の書店で、大江健三郎さんの新しい本をみつけて、ある光景をまざまざと思い出したのだ。その本は大江さんのインタビュー集ある。そのなかで、最晩年のサハロフ博士と対談したことを大江さんが語っていた。そのときの通訳が米原さんだと大江さんが覚えていた。米原さんは大江さんの小説の大ファンで盛り上がったことを私も思い出したのだ。
その番組は私が制作を担当した。折りよく大江さんの対話の番組を企画していた最中に、サハロフ博士が来日し急遽収録したのだ。
しかも、この本番から旬日ならずして、博士は急死した。私はすぐスペシャル番組として立ち上げたことを懐かしく思い出す。その編集の際にも米原さんにお世話になっていたのだ。
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