「イメージ」のタペストリー(つづら織)
久しぶりに大磯に戻って、自分の部屋で本を読んでいた、
いつのまにか眠っていた。ごーっと風が吹いて、その音で目が覚めた。裏山の木々が葉群れをざわざわと揺らしていた。風の又三郎が出てきそうだなとわくわくした。
島耕二監督で片山明彦が出演した戦前のフィルム「風の又三郎」だ。断片しか記憶がないが、少年が風の吹いた森の中から現れる場面だ。どこからともなく歌が聞こえてくる。
♪どどど すっぱいりんごも吹き飛ばせ すっぱいかりんも吹き飛ばせ
小学生だった頃に学校の講堂で見せられた巡回映画のワンシーンだったと思う。
このブログの記事もあと1つで1500件になる。匿名であっても誤認や捏造は許されないと思って一応調べながら書いてきた。だから不確かなものやイメージの断片といったものは極力排除してきたが、今日は今の心境にふさわしい「イメージ」の4,5編書き出しておきたくなった。あいまいでまとまりのないという意味での「イメージ」だ。
夜の湘南ライナーで帰宅する。茅ヶ崎から平塚に向うとき、相模川の大鉄橋を渡る。対岸の平塚にシティホテルの青いネオンがうっすらと浮かび上がる。夢の城だ。題名を失念したが童謡を思い出す。
♪金のお鞍に銀の鈴 夢の馬車がしゃんしゃんと
青いポプラの並木道を むちをふりふり駈けてくる
長新太の画が忘れられない。空にかかった三日月が地上に降りて、山の湖でひとり泳いでいる。上半分だけ月を出して湖面をすいすい泳いでいる。
今頃の春の暮れだった。オランダ南部の城下町にいた。撮影スタッフたちと夕食を終えてホテルに戻ってゆく途中だった。食事で気まずいことがあって皆黙りこくっていた。石で出来た城門に赤い夕日が差し込んでいた。私の前を歩くスタッフらも長い影を引きずっていた――。
平戸湾の外れにある度島(たくしま)という人口10にも満たない島に行った。宣教師のアルメイダが日本で初めて医療を施した島とだけ知られている。その島の反対側は岩だらけで人影はまったくない海岸だった。海賊伝説があって岩屋の内部には武蔵将棋の図が彫り込まれてあった。風が強く波は荒かった。玄界灘である。遠く壱岐のほうまで見晴るかすと、大波の飛沫が飛んできた。荒波が夕焼に染まり始めていた。見上げると、藤色の空に一番星が光っていた。
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