比較文学論
話題の『鴨川ホルモー』(万城目学)を読んだ。
「鴨川ホルモー」。その物語は同じ大学の同じサークルに入った男女たちの間に持ち上がる、奇怪な闘いがそこには描かれている。「鴨川」という名がタイトルにあるように舞台となっている街は京都。主人公の安倍は、二浪の末に京都大学に入った男。現役の超秀才でないところがこの物語のキモ。葵祭りのアルバイトで牛車を引くエキストラをしたことから、安部は風変わりなサークルに勧誘される。その名も「京大青竜会」。
その「京大青竜会」の新入生歓迎コンパ略して新歓コンパで、安倍は早良京子という理想のタイプに出会い一目惚れする。彼女といたいがために、不可解なサークルであるにも関わらず、安倍はそのまま「京大青竜会」に加盟してしまうのだ。
そして、2,3ヶ月経った祇園祭の宵山の夜。「京大青竜会」の本当の活動が明らかになった。四条烏丸の交差点へと向かっていくと、京大サークルのリーダーであるスガさんによって「ホルモー」の開催が告げられる。その場所には、この闘いに他の大学から参加する面々がいた。「京都産業大学玄武組」「立命館大学白虎隊」「龍谷大学フェニックス」と名乗る3チームである。
ネタばれさせて言うと、ホルモーは20センチほどの背丈の鬼たちのことを指す。常人には見えない存在だが、鬼語を解するようになると見えてくる。京都の東西南北の4大学、京都大、京産大、立命館大、龍谷大のサークルの学生が秘密の儀式の後に鬼語を習得し、鬼たちを自在に操って戦わせることになるのだ。『鴨川ホルモー』はそんな物語である。
安部はそのサークルで帰国子女の高村という親友や、大木凡人風の眼鏡をかけた楠木ふみと出会う。そこで繰り広げられる恋と失恋の物語。まさに青春小説だ。
作者は1976年生まれの京都大学法学部卒の人だ。この作品で第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞し、作家デビューを果たしたと聞く。
日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『太陽の塔』の作者の森見登美彦も同じく京大出身の若い作家だった。1979(昭和54)年生れだから二人は同世代である。この二つの小説は共通点が多々ある。
○両作品ともファンタジーだ。そして現在流行しているライトノベルというカテゴリーにある。
○主人公はうだつの上がらない京大の男子。一方は2浪して法学部、もう一方は一年留年した5回生の農学部で“学んでいる”。
○物語の舞台は基本的に京大キャンパスがある百万遍を中心に設定されている。
○配役はうだつのあがらない主人公、それをちょっぴり支える頼りない親友、マドンナ、そしてユニーク女性キャラクターがそれぞれ配置されている。「太陽」では邪眼。「鴨川」では楠木ふみだ。このユニーク女性キャラは「鴨川」の勝ち。
○物語の中心となるイベントは京都の繁華街。両者は鴨川デルタと賀茂川のアベック群について同じようなことを言及している。
このように、よく似た物語がほぼ同じ時期に生まれたのはなぜだろうか。今や、ライトノベルの「メッカ」となった京大の謎について、考察していきたい。(この項、不連続に続く)
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