韓国の山
またまた「冬のソナタ」のユン監督の話題となるが、昨夜渋谷のツタヤでユンさんの「夏の香り」第1巻をレンタルした。この物語の噂はよく聞かされてはいたが未見だったので、新しい日本語字幕バージョンが出たと聞いて借りに行ったのだ。
オープニングのタイトルバックが、雨が注いで生まれる水の輪というところなど、冒頭からいかにもユンさんらしい画作りがあちこちに見られる。脚本には冬ソナコンビのあの二人の名がある。何となく冬ソナを引きずっているのかなと先を見ていくと、確かに何かが起きたとき使われる効果音楽のピアノ音も似ている気がする。今回のライトモチーフの曲はシューベルトのセレナーデ、なるほど。くすっと笑わすユーモア感覚もしっかりある。でもカッティングのテンポはやや早い。服の趣味やスタイリングは「冬のソナタ」のほうが私は好きだが。
まあ、「冬ソナ」に似ているといえば似ているが、この作品はこの作品なりのテーストがあると思わせたのが、登山のシーンだ。冬ソナの高校生のキャンプの時より本格的な登山、というよりトレッキングが第1話の主な舞台になっていた。
長い間、私は韓国では禿山が多いと思い込んでいた。日本によって植民地として統治されてから朝鮮戦争まで数々の戦乱が続き、朝鮮半島の草木が疎らになったと勝手に考えていたのだ。
ところがユンさんの作品見ると、その先入見を払拭される。実に青々とした木々が山々のなだらかな斜面に叢生している。さらに滝や山清水が流れて水が豊な山系だということが知れる。
物語のヒロインの職業はフローリストで野生の花を求めてこの山に入ってきたのだ。ヒーローはイタリア帰りの風来坊。帰国してすぐ思い出の山に登ってきた。実はヒロインの胸の奥の心臓は、かつてこのヒーローの彼女だった人のものだ。むろん二人はそんなことを知る由もない。だが理由もわからないのに、見知らぬ二人はすれ違うとヒロインの移植された心臓が早鳴りをはじめるという、いかにもユン好みのストーリー。
山でのアクシデントで、二人は山荘に一泊することになる。そこでコーヒーを沸かして呑むシーンがある。やはりコフェルで飲むコーヒーは格別だなあと、山好きらしいセリフが飛び出す。きっとこういう会話は、ユンさんが指示しているはずだ。
前にもユンさんとマネージャーのチョンさんとは毎週休日にはソウル近郊の里山をトレッキングしていると書いたが、ユンさんの山好きは半端ではない。1ショット1ショット山の良さを表している。そして時折降る天気雨が美しく効果的だ。この雨をめぐるカットバックの世界がまた美しい。青々とした山、美しい天気雨、野の花。そして物語もまた思わせぶりに進行していく。うまい設定、繊細な画作り・・・。
今、私は検屍官シリーズのミステリーに凝っているのだが、このドラマに引きずられそうだ。これでまた「夏の香り」による寝不足が始まる。
人気blogランキング