浄瑠璃のすごみ
昨日、大阪文楽劇場は千秋楽を迎えていた。私が劇場に入った午後1時過ぎ、ちょうど竹本住大夫の演目が始まろうとしていた。
さっそく、スタッフ専用席で彼の芸を拝聴した。
ここ数日、体が疲れていて元気がないと事前に聞いていたが、とんでもない。腹のすわった声が朗々と満員の館内に響いていた。大入り、千秋楽といったことで、師匠の闘志をかきたてたのであろうか。およそ20日間、毎日床(ゆか)にあがるのは大変なことだ。しかも住大夫さんは切り場という物語の山場を語る立場にあるのだから。あらためて、「芸」のすごみを見せ付けられた。
本番公演を通して見るのは今回が初めてである。昼の部、夜の部、合わせて4時間以上見続けたが面白かった。といっても、語りの人によってやや間延びしたりすることもあって、全部に聞きほれたわけではない。断然、芸の違いがあらわれる。年が若く、声量があるからいい声だとはいえないのだ。
一階正面の奥だったこともあって、近眼の私には人形の微妙な表情までは見えず、もっぱら語りと三味線に聞きほれた。
昼の部が終わったところで楽屋に行き、竹本住大夫、鶴澤清治、両師匠に挨拶をする。清治さんは相変わらず闊達でにこにこしている。住大夫さんは無事千秋楽をむかえてほっとしていたのだろう、終始笑みが絶えなかった。なんといっても82歳の御年だ。舞台を見ているととてもその年には見えない。それだけに人の知らない努力があるはずだ。
久しぶりに古典芸能の楽屋に入ると、気分が高揚してくる。舞台という華やぎは魔性の力をもっているのだろう。出入りする芸人さんたちも普段の稽古のときとまったく違った表情となっている。歌舞伎とちがって事前の「こしらえ」があるわけではないので、住大夫さんも清治さんも楽屋では穏やかな表情なのだが、廊下に出ると張り詰めたものを感じる。
4月の定期公演は昨日で終わり、いよいよ私たちの期待する、5月7日「芸の真髄」公演にむけて動きが始まることになる。本日は午後からその稽古。その様子を撮影する予定だ。
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