生き辛い世の中
「うつ病」が増えている。
特に、働き盛りといわれる30代に顕著らしい。
理由はいくつかある。人生で一番多忙で、仕事だけでなく家庭での負担も大きく膨れ上がる時期だということ。中堅として会社の真ん中に挟まれて気苦労を背負い込むこと。成果主義で追いまくられること。
こんなことは、私らの世代でも体験したが、うつ病になるまでには至らなかった。なぜか。
おそらく人間関係が変わりつつあることが遠因ではなかろうか。
職場が仕事だけする場所になりつつあるのだ。終業後、一杯飲みに行くなんてことはだんだんなくなっている。若い社員たちはアフター5まで拘束されたくないと、終わればさっさと自分の世界に引きこもってゆく。
若い間はそれでもいいが、30代になりマネージメントをやらされるようになると、仕事とプライベートを切断できるほど会社はあまくない。そういう立場の中堅は誰にも相談できず、心を打ち明ける友や部下もおらず、一人悶々とするのだ。むろん、こんな単純ではないことは知りつつ、あえてこのうつ増加現象を世の中の変化の結果として考えてみたい。
これは、私のような第1次定年を終えた世代から見ると、赤提灯機能の低下ではないかと勘ぐりたくなる。飲み屋でオダをあげることが今ほとんどない。というか居酒屋というものが働くものたちの「癒しの場」ではなく、若い男女の合コンの場になりつつある。しかも最近の居酒屋はほとんど個室化していて、大部屋というかテーブルに止まってあっちこっちで飲むという風情は、少なくとも渋谷では減っている。ほとんどない。
昔(昔のことを言えば爺さんだよと思うが、やはり言いたい)、渋谷センター街の外れに栄楽街という飲み屋がごちゃごちゃと並ぶところがあった。毎晩、番組制作を終えた連中が深夜まで飲んで気炎をあげたものだった。カラオケもない頃は流しが来て、手拍子で歌ったものだ。口角泡を飛ばして議論した。この愚にもつかない行為で、仕事のクールダウンをし、精神の安定を保っていたのだ。
こういうことを、若い人らは暑苦しいと敬遠するようになったのか。10年ほど前、栄楽街はある日突然ブルドーザーに押しつぶされた。その跡にピンクハウスのアーリーアメリカン風のブティックが出来た。それも数年後閉鎖され、今はファッショナブルなイザカヤになって、若いカップル御用達の店になっている。
今、渋谷の町で居酒屋機能を果たす店は本当に少なくなった。そのまま復活せよというわけではないが、この機能を何かのカタチで甦らせることはできないのだろうか。そういえば、今週の「釣りバカ日誌」ではハマちゃんのところの新入社員が花見の場所取りに行く話だった。わが職場でも10年前はそういうことがあったが、近年とんと聞かない。
今、落ち込んでいる世代とは20代後半から30代前半。いわゆる就職氷河期にむりくり入社した輩が多い。自分がやりたいことを仕事とするゆとりがないままとにかく仕事に就いた人たちだ。今頃になって、この仕事は自分に向いてないのじゃないかと迷っているのだ。
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