白い恋人たち
白い恋人たちと言っても札幌のチョコレートのことではない。1968年にフランス、グルノーブルでひらかれた、第十回冬季オリンピックのテーマ音楽を指す。
白い恋人たち――それは、真っ白なゲレンデで無心に遊ぶカップルたちをイメージさせる、冬の音楽だ。
ずっと忘れていたが、昨夜、テレビを見ていたら札幌大倉山ジャンプ競技場の場面で、この音楽が流れて懐かしく思い出した。
作曲はこの当時のヒットメーカーだった、フランシス・レイ。元々アコーディオン奏者でシャンソンを弾いていた人物だ。その彼の指先から創り出されるメロディは甘く美しく人々を魅了したのだ。
ニースで生まれたフランシス・レイはパリにやって来てモンマルトルに住んだ。そこでエディット・ピアフやイブ・モンタンらと交流する。ある日、新進の映画監督クロード・ルルーシュに出会ったことからレイの運命が大きく変わる。
ルルーシュが監督をし、レイが音楽を担当した映画『男と女』(1966)、『パリのめぐり逢い』(1967)が立て続けにヒットするのだ。
レイは、一躍フランスを代表する音楽家になってゆく。同様に映画監督として地歩を固めたジャック・ルーシュ。その彼に、おりしもフランスで開かれるオリンピックの記録映画の話が舞い込む。
当然、彼は盟友フランシス・レイに音楽を委嘱する。こうして、「白い恋人たち」は生まれた。
この映画音楽のオリジナルタイトルは、映画の題名である「フランスにおける13日間」である。冬季オリンピック13日間を描くというドキュメンタリーのタイトルだったのだが、日本語の詩には「白い恋人たち」というロマンチックな題へ変わった。さもありなん。ルルーシュの映像は美しく、まるで恋愛映画のようなテーストだったから。
私はこのメロディが大好きだ。68年当時、平凡パンチのデラックス版(通称デラパン)には歌の譜面が付録でついていた。それを見ながら友人がエレクトーンでこの曲を弾いてくれたものだ。不思議だ。あれから40年近く経過しているのに、この歌を聞くと、あの頃の自分の思いや服装、風景が鮮やかに蘇ってくる。
雪の朝、太陽に解け始めた淡雪のしずくが障子を通して聞こえてくる。火鉢しかない寒い部屋で、このメロディの演奏に耳を傾けている。
フランシス・レイの名が世界に轟いたのは映画「ある愛の詩(うた)」の音楽を担当してからだ。ライアン・オニールとアリ・マックグローの共演で純愛を描き世界的に話題になった映画の主題歌だ。レイはこの音楽で1970年のアカデミー作曲賞の栄冠を手にする。私自身は、この「ある愛の詩」のメロディは短調の淋しげなものでそれほど好きではなかったが、もう一つの挿入歌だった「雪の中の戯れ」という曲が実に美しく好きだった。このメロディと「白い恋人たち」が私の中の「冬の金沢」を作り上げている。
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