太田川の蟹
広島、紙屋町のドトールでこの記事を書いている。これから大学関係者と会って大伴展を勧誘するのだ。
昨日は中国地方に春一番が吹いたと、中国新聞が報じている。雨のなか4月上旬並みの暖かい風が吹いたのだ。今朝はからりと晴れ上がっている。東京から傘を持ってきたのがうらめしい。
私は中国新聞が好きだ。この社には敬愛するジャーナリストがいた。かつての広島市長だった記者と前社長である。お二人が現役だった頃のリベラルな仕事の仕方にずっと感服している。昨年、原爆の番組を制作する時いろいろ教示いただいた現役記者も実に魅力的な人物だった。いずれも社会の不正を許さないという点で、きちんとした考えをもつ人がこの社には多い。そういう人らが作る紙面はきりりとしていて、私は好きなのだ。
――そして帰路。空港行きのリムジンバスに乗って太田川を今越えている。
大学でのミーティングは予想以上にいい感触を得た。3人の芸術学部の先生たちが私の企画に耳を大いに傾けてくれた。ひょっとすると秋には広島で大伴昌司展が開催されるかもしれない。いい結果を得て太田川の風景も晴れ晴れと見える。心地よい。
太田川は大きな川だ。14年前に東京からの客を連れてこの川を可部の近くまで遡ったことがある。市内から1時間ほど車で走った。其の辺りまで行くと両岸に山が迫っていて、清流が美しかった。そこで川蟹を食べたのだ。
日本海育ちとしてはずっと越前ガニが一番うまい、蟹はやはり北の海のものにかぎると信じていた。ところが川蟹の美味さはそれを上回っていた。小ぶりで足は細くその身がうまいというのではない。蟹の腹にある味噌がとびきりうまいのだ。味噌が濃厚にして滋味深いのだ。熱燗を片手に蟹の味噌をせせって食すと陶然とした。昼間の酒だったからなのか蟹のせいなのか、銚子2本ほどですっかり酔った。後で聞いたのだが、この川蟹は有名な上海蟹と同系統にあたるらしい。
私は蟹には目がないので、市場に出ていると聞くと、どの街へ行っても蟹を探して食べ歩いた。根室でも釧路でも札幌でも新潟でも金沢でも丹後でも浜田でも下関でも博多でも肥前竹崎でも茂木でも糸満でも、食べた。
でもいちばんうまいと思ったのは太田川の蟹だ。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング