
藤沢周平のミステリー
藤沢周平が登場したとき、山本周五郎に似ているという評判がたった。たしかに「長い坂」などのビルディングスロマンや城下ものには似た香りはあった。名前にも周があって、藤沢自身もそういう意識があるかなと思った。
だが、読後は似ているかもしれないが、読中はかなり違うのだ。ミステリーを読むような疾走感が藤沢作品にあった。文章表現も俳句を意識した切れ味のいいボキャブラリーが駆使されるほか、映像的な描写が実にうまいのだ。私は心を奪われた。藤沢と言う人はミステリーと映像が好きではないかと想像した。その好みもおこがましいがかなり私と近いのではないかと見当をつけた。
遠藤展子の『父・藤沢周平との暮らし』(新潮社)を読んで、やはり私の見当はあたっていたと思った。藤沢の一人娘が2007年1月に出版したエッセーである。
その中の「海外ミステリー」という章で、藤沢の好きな小説が列挙されている。チャンドラーの『赤い風』『雨の殺人者』やハヤカワミステリ文庫『長い別れ』『さらば愛しき女よ』がある。そして、パトリシア・コーンウェルがお気に入りの作家とあるではないか。わざわざ、コーンウェルの本を「面白いから読んでごらん」と娘に勧めているのだ。私もこのミステリーが好きで1年ほど前に、このブログで書いている。
映像の好みも、テレビ、映画がだいたいにミステリー、メロドラマだ。
テレビでは「鬼警部アイアンサイド」と「刑事コロンボ」。これもまったく私と同意見。
遠藤展子は「父の誕生日」という章で、藤沢の好みの映画を挙げている。「真昼の決闘」や「ドクトルジバゴ」は普通の好みだが、その端っこに「刑事ジョン・ブック 目撃者」があるのがミソだ。この映画の匂いは、「蝉しぐれ」を読んだときから感じていた。
そして映画に、デビッド・リーンの「逢いびき」を見つけたときは嬉しかったな。
新年度に、衛星放送では藤沢周平のドラマをずらりと並べて放送するそうだ。楽しみである。その関連の番組を、私も作ってみたいのだが。
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