嵐一過
昨夜は雨風がひどかった。11時ごろにはカミナリが何度も光り轟音が鳴った。
テレビニュースによれば、東京では34年ぶりの暮れの大雨だという。昨年だったらこの雨は雪に変わっていたはずだが、やはり今年は暖かいのだ。地球が心配だが、暖かい冬のほうが年寄りや病人は過ごしやすい。故郷(くに)の母を考えると、暖冬をよしとせざるをえないのは複雑だ。
嵐の間、私は日本映画を2本見ていた。「曾我兄弟・富士の夜討」と「郡上一揆」だ。
曾我は昭和30年代の東映オールスター映画、郡上は数年前に作られた独立プロダクションの映画だ。毛色はまったく異なる時代劇だが、それなりに面白かった。
曾我は以前見たことがある、ということを見始めて思い出した。曾我十郎が東千代之助、五郎が中村錦之助である。敵役の工藤祐経はあの月形龍之介と、主要な役者がみなスケのオンパレードで、いかにも歌舞伎のような演技の映画である。あまりの大衆娯楽映画でややゲンナリしたが、観ているうちに、私たち団塊が少年時に刷り込まれた集合イメージがいちいち確かめることができて面白かった。兄弟が夜討に出かける前に竹を切って水杯を交わす場面は、少年時代の気分を誘発させてくれた。
少年時には気がつかなかったことを、今回発見した。十郎の愛人の虎である。高千穂ひづるが演じていて、いかにも気が強く男勝りの遊女である。彼女は大磯にある遊郭の女で、大磯に住んでからその存在を知ったのだが、この映画でもきちんと十郎の恋人で大磯在ということを名乗っていた。
十郎が敵討ちで死んだ後、虎は仏門に入り冥福を祈って暮らしたといわれている。梅雨時の雨は虎ケ雨と呼ばれ涙雨とされている。
この虎のことを大江さんと話したとき、大江さんは、虎は「グレートマザー」を果たした人ですね、と言ったことが忘れられない。ということで、曾我物語は私の住む相模湘南に縁の深い作品なので、この映画をあらためて興味深く観た。
かつては「曾我物語」は「忠臣蔵」と並んでいやそれ以上の人気のあるあたり狂言だったが戦後はほとんど力を失くした。なぜだろう。
一夜明けて、晴れた。光がまぶしい。気温がぐんぐん上昇している。ツヴァイク道で道端から湯気が沸き起こっていた。

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湯気が立っているのが見えるだろうか。