娯楽で本は読まない
『読む力・聴く力』という本の中で、立花隆が私は娯楽で本を読まないというようなことを語っている。
《だいたい私は、これまでも楽しみで本を読もうと思ったことはほとんどない。だからエンタテイメント系の本は基本的には読まない。残り少ない人生をそんなことに使うのはもったいないと思う。》
いかにも立花らしいと思う。これまで番組に4,5回出演してもらったことがあり、其の都度打ち合わせをしたが、きわめて実務実用的な考えをする人だという印象をもった。有名な彼の事務所兼書庫のある猫ビルにも入ったことがあるが、3階建ての建物に所狭しと積まれ並べられた書籍はたしかに推理小説も冒険小説もなければファッション誌もなかった。
精神というものが脳という物質で説明できるとする、ノーベル賞生物学者利根川進にロングインタビューした『精神と物質』という書籍などは、専門家しか理解できないことを、素人でも分かりやすく解いたとして有名だが、このような“高邁な”事柄を扱った本しか、立花は読まないというのだ。
私はといえば、仕事がらみでする読書は3割で、他は娯楽系、暇つぶし系の感動作を読みたいと思って、いつもその類を捜し求めている。楽しみで読むことができないなら、疾うに読書なんて止めているだろう。
藤原正彦が昨日テレビインタビューに答えて、「一日一ページは最低読むべき」と力説していた。本を読まないということは動物と同じレベルでしかないとまで語っていた。おそらくこの藤原の読書対象というのも楽しみで読む本ではないだろう。いわゆる為になる本を読めというのだ。
本日、眼鏡を作りにめがね屋に出かけたら、目を悪くさせないためにという標語が店内に張ってあった。その一条に「電車で読書しないこと」とあった。
冗談じゃないよ。本は楽しみで読む。残り少ない人生を考えるともったいないという立花よ。そんな「得して為になる」本しか読まないあなたこそ気の毒な人と言い返したい。自分を国家と同一化したい藤原よ、漫画を読んだってテレビを見てからだって心は育つもの。今あなたが憂う品格のないと思われる人格の持ち主というのはいい加減な読書をしてきた教育委員会のおっさんたちだということに、目を向けてもらいたい。電車内読書を禁じられたら、それこそ残りの人生の楽しみが半減してしまう。
なんだか、蟹を食べながら図書館から借りた本20冊を濫読していて、立花隆の文章に出会ったらカチンと来て、支離滅裂な反論を言いたくなった。でも、この御仁は1970年代、「少年マガジンは現代最高の総合雑誌である」と評価をしていたのだがなと、思わず首を捻ってもいる。
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