面臭い雑誌「団塊パンチ]
団塊世代のレトロを狙って作られた雑誌「団塊パンチ」。その3号を読んだ。
個人的な興味もさりながら、今取材している「あしたのジョーの、あの時代」の参考資料としてでもある。
特集「68年に何が起こったか?」というテーマ立てそのものにも引かれた。ジョーの連載も其の年の1月1日からだ。この年から連載終了の72年までは、きわめて重要な時代となる。だから、そのキャッチフレーズに釣り込まれてこの雑誌を購入したのだが、特集の2も目のつけどころがいいのだ。題して「ちあきなおみ伝説」。
実は5年前に同様のタイトルのドキュメンタリーを作ろうと取材したことがある。彼女の元マネージャーという人物からの口ききで動いたのだが、結局彼女の了解がとれず断念したことがある。そのとき、ずいぶん調べたものだが、まさか宍戸錠を引っ張り出すとは思いもよらなかった。宍戸は彼女の義兄にあたる。
ちあきの沈黙は夫郷鍈治の死によるものという噂はながく語られているが、その真実はほとんど闇だ。そこで郷の兄である宍戸を引っ張り出すという奇策を用いたわけだ。
こういう企画を立てるというのはこの本に知恵者がいると見た。
取り上げている人物が胡散臭くていい。アダルトビデオ監督でカリスマ代々木忠。ヨヨチューの素顔を見せるなんて粋だ。彼は団塊より10年上だがピンク映画やAVで我が世代に大きな影響を与えてきた人だ。私も前からこの人の番組を作りたいと思っていた。彼の代表作は「ある少女の手記・快感」。ピンクの名作だ。
さらに川添象郎まで引っ張り出すとは恐れ入った。伝説のプロデューサーだ。明治の元勲後藤象二郎の孫にしてドラッグで何度か捕まった「複雑怪奇」な御仁だ。話題を呼んだミュージカル「ヘアー」の招聘やニューミュージックのジャンルを開拓した人でもある。
以前から面白そうな人物だと思っていたが、やっとこれで素顔が見える。この人は昭和40年代のある部分をしっかり掴んでいたのだ。こういう証言をもってくるなんて、この編集部は相当分かった人がいるはずだ。
一つだけ不満がある。この本に登場する人物は団塊世代よりやや上の人たちだ。だから世代の本音が見えない。先日も書いたが、団塊本はたいていその上の世代の意見や情報で作られていることが多い。これには理由がある。実はそのことはうすうす気づいているのだが。
つまり団塊はいろいろ“騒動”を起こしたが、実際に扇動したのは年長組なのだ。わたしらが大学に入った頃は60年安保の残党のような活動家が大きな声を出していた。演劇だって唐十郎、寺山修司、蜷川幸雄、佐藤信、みんな年長だ。原田芳雄も中村敦夫も石橋蓮司も吉田日出子もみんな兄(アニ)さんや姉(アネ)さんだった。
私らの世代は、あしたのジョーの後の時代に主体的に動き始めるのだった。ジョーの時代は大きな波に乗って動いていたというのが実感だ。
さて再び「団塊パンチ」に戻すと、この雑誌は不定期だが次号が待ち遠しい。他のレトロ雑誌やサライのような隠居趣味と違って、胡散臭く面白いのだ。流行の表現を使えば
面臭い(オモクサイ)雑誌だ。
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