パチンコ
小学校低学年の頃に、スマートボールというのが流行った。白い大きな玉を弾くと、ビーンボールのように斜めに傾けられた台の頂上まで転がってゆき、そこから玉は下に向かって落ちてゆく。行く手を阻む釘たちをくぐりぬけてそれぞれのポケットに入れば、チンジャラジャラと当たり玉がどさっと出るという仕組み、まあパチンコの従兄弟のようなものだ。一時期ものすごい勢いで流行し、わが町では八百屋をやっていた店がある日突然スマートボール屋に変わっていて、しかも大勢が詰め掛けていて驚いたことがある。
我が家は父がいっさい賭け事をしない人間だったのでパチンコとは無縁だった。他所の家では父親がパチンコでキャラメルやシャンプーなどを取ってくると聞いて羨ましいと思った。
大学へ入る頃になると、パチンコ屋に出入りするようになった。といっても一回100円の玉しかもたない。それをあのパチンコの穴に一個一個落として弾いて、ポケットを狙うのだ。この玉込めが勝負の成否を決めた。親指の腹を使って玉を押し出すようにする回転では弾いた玉は生きない。親指の爪にあてて玉を送りこんでやる回転だとバネで弾かれても玉はいい具合に転がるのだ。この玉送りの技術を覚えるのに半年はかかった。やっと覚えたと思ったら、パチンコの機械はどんどんオート化していった。
これじゃあ、別に技術も何もいらない。黙っていたって機械が玉を弾いてくれる。こんなのはパチンコと言わない。と足を洗ったのだ。
と言うと格好いいが、実際は勝負事に弱くほとんどパチンコで勝ったためしがなかったことと、貧乏学生にはたった100円でも出費はきつかったのだ。
早々と足を洗ってしまったが、昔のパチンコはもっと気楽でノーテンキな感じがしたものだ。大当たりといっても3~5千円程度の玉の出だったし、第一に機械が牧歌的で玉を一発ずつ弾いていたのだ。今は自動でパチンコの玉を入れて弾くという行為は皆無だ。
昔のパチンコ台は玉込めだけでなく球をはじくスプリングを戻す強さの加減を行いながら一発一発打つ醍醐味があったが、近年はパチンコ台が玉の自動的射出機構を備えているため、ハンドルに手を添えるだけで球を打つことができる。たまにパチンコ屋をのぞくと、台の前で手も使わず盤面だけにらんでいる人を見かける。あんなことで楽しいのかなと、つい思ってしまう。
先日、ユンさんといっしょに歩いていたら、パチンコ屋の前で冬のソナタの台の大きなポスターを見かけた。それを見た監督は複雑な表情をしたのが心に残った。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング