ユン監督の清水詣で
話し合いの後、秋晴れの京都をユンさんは散策したいと言った。1996年に一度訪れたがその後来日しても機会がなかったので、ぜひ紅葉の京都を見たいというのだ。通訳の厳さんらとともにユンさんは清水寺に行くことにした。
秋の京都は観光客でいっぱいだ。清水坂下まで車でたどり着けず、別道から歩いて三年坂に入り清水の舞台を目指した。ユンさんはカメラをぶら下げていて、面白い画をみつけるとすぐ撮影する。途中、うどん屋に入って遅い昼食をとった。監督は「月見うどん」と日本語で注文する。わたしらが鰊そばを頼むとそれはどういう味がするのかと、すぐ聞く。
御山の頂まで上がる頃には秋の夕暮れになっていた。斜陽がまぶしい。ぞろぞろと清水の舞台へ進む。ここには監督はそれほど関心がないようだ。むしろ眼下の紅葉に目を奪われていた。おかしかったのは、その後だ。
本殿を抜けて裏へ回ったところに地主神社の境内があって、若い女性らで賑わっていた。ここへ行って見たいと言うので立ち寄ることにする。若い女の子が目を閉じてよちよち歩いている。ユンさんは珍しそうに眺める。
実はここは恋占いの名所なのだ。境内に一対の石があって、いつからか「恋占いの石」と呼ばれるようになった。奥にある一方の石からもう一方の石へまで目を閉じたまま歩いて無事にたどり着くことができれば恋がかなうという伝説が出来たのだ。室町時代の「清水寺参詣曼荼羅」には「恋占いの石」らしきものが描かれているから、この信仰はかなり古い。
たまたま居合わせた若い女性はうまくいかず失敗した。目を開けてその娘は口惜しそうな顔をする。それを監督は楽しそうに見ている。その子が再び挑戦すると、その後ろについて歩く。心配そうにかつ楽しげに、若い女の子を観察している。
監督がふと呟いた。「人間って、恋をするとどうして不安になるのでしょうね」
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