尻すぼまりのドラマ
つい最後まで見てしまったが、いつも同じ感懐をもつ。「ああ、やはり最後は尻切れとんぼだな」って。人気テレビドラマ「家政婦は見た」だ。
今日も、舞台はIT産業の裏側という設定はうまいと思ったが、途中からシンガポール現地妻の話になり、その愛人をジュディ・オングが演じていると分かった頃から物語の雲行きが怪しくなった。せっかく、IT産業のアジア戦略攻防に、どんなエピソードをもってくるかと思ったが、つまらない隠し子騒動で終わった。
これは脚本の柴英三郎が現代をとらえきれないということだ。このベテランのシナリオ作家はせっかく現代的な課題が与えられても、古臭い人間関係に落ちてしまう。
ただ、物語る力はうまく前半は引きずりこまれるのだが、1時間ほどのところから緊張感がほどけてしまうのだ。実は、こういう尻すぼまりの終わりになるかもというのは予感していた。ここ数回見たこのシリーズがいつも出だしは好調だが最後は面白くないというか、矮小化された終わりになるのが多いのだ。
元の松本清張の原作「熱い空気」はめっぽう面白いが、テレビドラマはその設定にのっているだけで、物語としてはなかなか詰めきれないのだ。なんとなく見終わって時間を無駄にしたと愚痴を言いたくなる。
これと同じ傾向が、森村誠一のミステリーにもある。森村の語り口が粘っこくて、世の中に対する暗い正義感が渦巻いていていつも最初は期待するのだが、最後はご都合主義的偶然で処理されることが多い。
「家政婦」も森村ミステリーも、両方ともすぐ手を出したくなる何かがある。またどうせ裏切られるだろうと思ってはいても、新しい作品が出ればつい見たくなり読みたくなるのだ。
このドラマは配役がいつもいい。言うまでもないが、主人公石崎秋子家政婦は市原悦子以外に考えられない。だが最近は妙に訳知りで頭のいいキャラクターになってしまった。初期の、都はるみの歌が好きなちょっと世を恨んでいるあのキャラクターの彼女に戻ってほしい。さて、今夜はビスコンティの「ルードビッヒ」を見なくてはならない。8時から4時間の大作だ。前から知っているが、きちんと観るのは今夜が初めて。
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