キネマ旬報賞80回
1961年当時映画は全盛期を迎える。大手5社で年間520本の映画を製作した。そこを頂点として下降をたどり、10年後には大手は160本しか作れていない。当然観客動員も全盛期の10分の一にまで減った。テレビに押されて映画が衰弱した。そこからずっと低迷。そのうちハリウッドが金にもの言わせてアメリカナンバーワンの映画を打ち出し、世界のマーケットを席巻する。
日本では洋画:邦画の公開比率は7:2まで下落する。
2000年を過ぎて状況が変わった。ハリウッド作品がマンネリに陥り徐々に力を失ってゆく。一方、日本映画はテレビのマーケット戦略が持ち込まれ、かつDVDなどで収益を確保するという方式で活力が出てきた。昨年は360本製作されたが、今年は10月の末で370本を越えている。おそらく1年通して400本を越えるだろう。映画比率は50:50まで回復すると見られている。
この数値はインドをのぞくと世界一だろう。イタリアやフランスではせいぜい年に5,60本の製作しかなく、映画館にかかる作品はほとんどがハリウッド映画である。世界的に先進国の映画は低迷している。ある映画研究家に言わせれば、映画が盛んになるというのは社会変動が激しい区域だ。その意味で西欧や日本では映画芸術が伸び悩むとみられるのだが、日本映画だけは好調だ。なぜか。
異業種とのタイアップが功を奏しているのだ。特にテレビ局、フジテレビの映画戦略だ。旧来の映画が観客の要望を無視して作ってきたことから、観客の望むものへと転換したのがフジ方式だ。加えてテレビで宣伝をし、テレビで馴染みのタレント、役者を使うという戦術がうまく回転したのだ。
ところが、ここへ来てフジが作る映画が苦戦を強いられている。「うどん」はまあまあだったが、「7月24日通りのクリスマス」「地下鉄(メトロ)に乗って」は全然評判にならない。一説によれば、これは中規模の作品でフジも本腰を入れておらず、次の正月興行でどかんとヒットを狙っているという。そんなにうまくいくのだろうか。
日本映画の底の浅さは徐々に現われている。Jホラー、人気タレント起用、PアンドA、DVDによる回収、などで儲かればいいという風潮がこの数年はびこり、作品としての見ごたえのある作品が減少している。韓国と対比すればよく分かる。かの国の映画製作の力は「韓流」ブームを越えて着実に育っている。正月に公開予定の「王の男」を見ればよく分かる。
さて、世界の映画賞の中で最も古いものはなんとキネマ旬報賞である。
アカデミー賞の歴史は今年で78回で、それよりも1年早い1924年から日本ではいい映画を選出し賞を与えてきたのだ。映画が生まれて10年たらずで日本で映画の興行が行われ、映画会社も出来た。わずか30年後には日本で映画の批評が始まっていたのだ。「キネマ旬報」の出現だ。
以来、79回にわたり毎年映画ベストテンが選出されてきた。これはそのまま日本の映画の歴史でもある。こういう歴史をもつ映画雑誌は世界にない。来年の2月10日、80回目の授賞式が行われる。
こんなことを番組にできないかなと、今頭を振り絞って企画を構想している。
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