半七捕り物帳から説き起こして
岡本綺堂が面白いと、友人が薦めてくれたので、「半七捕り物帳」を飛ばし読みした。
この物語の設定が面白かった。
半七という老人をわたしという新聞記者が訪ねて行って、昔話を聞くのだ。時代は明治の御世になっている。この老人が江戸時代に岡っ引きとして活躍したその話を聞きに行くのだ。うまいもんだ。
特に作劇法や日本的情緒をまぶした場面作りは見事なものだ。練達の士か。ところで、この物語の下敷きがシャーロック・ホームズと聞くとなるほどと合点がゆく。
綺堂がこの小説を書こうと考えた大正時代、『シャルロック・ホルムス』が翻訳されて評判をとったばかりだった。この探偵小説と江戸の名所図会を合わせてできないかと、構想したのが半七捕り物帳だった。半七がホームズで、新聞記者の私がワトソン君か。
私が一読したのは「津ノ国屋」という中篇だが、事件のトリックはたいしたことはないし、中ほどから犯人の予想もついてくる。その意味ではミステリーとしては物足りないが、小説全体に広がる江戸情緒がいいのだ。幕末の江戸が目に浮かぶ。
まったく話は違うかもしれないが、ビッグコミック本誌の連載劇画「単身花日」がこのところお気に入りだ。東京に妻子を置いて鹿児島に単身赴任する主人公。少年時代そこで暮らしたことがあって、土地鑑ありだ。その頃、桐野さんという女子に恋をしたことがある。その女子と思い出の町で再会する。物語の幕開けだ。だが、いちいち、主人公は置いてきた妻に後ろめたさを感じている。この仕草が最初だけならともかく、3週も4週も続くと、わざとらしい。
この辺の心理は、作者ややミスリードではないか。いつまでも東京への呵責はちょっと脇において、鹿児島の“恋”を早く再燃化させなさい。(読者の私は苛立っている)
否、作者は物語の初期段階で、伏線をいろいろ張り巡らしている、という意見もあろう。
だが、そういう操作もだらだらすると、本物語にまでたどり着く前に、読者は引くぞ。
このあたり、「春のワルツ」にその苛立ちを今感じている。
このブログは支離滅裂だ。本日昼下がり、娯楽読み物って何かなと資料室で考えていた、その妄想をそのまま書いた。
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