ゾフィー・ショル、最期の日々
今年の正月に公開され、1ヶ月ほど前にDVDとしてリリースされた映画「白バラの祈り 」。どうしてもこの映画を見たかった。今夜およそ2時間かけて見て感動の余韻からまだ覚めない。
「白バラ」の物語はあらかじめ知っていた。私の学生時代に未来社から発売された『白バラは散らず』(1964年)を読んでいたから。だから、ある程度予想しながら観たのだが、分かっていても感動の波が映画と共に大きくうねり、最後にはただ呆然となった。
1943年、ナチ支配下のミュンヘン。反ナチ闘争を組む学生の地下組織があった。「白バラ」と呼ばれる。ハンスとゾフィーの兄妹はそのメンバーであった。二人はある朝ミュンヘン大学の構内でビラをまいているところを見つかり、ゲシュタポに連行される。そこで取り調べを受けることになる。そして通常49日かけて審理される裁判はたった1日で終わり死刑判決が出され、執行までに99日があるのも無視されて即日の処刑となった。このとき白バラグループ5人がギロチンで処刑された。
白バラ運動に参加した学生は東部戦線に従軍した経験をもつものが多かった。彼らはそこで戦線における悲惨を目にしていた。かつ、スターリングラードの戦いにおけるドイツ軍の劣勢を知り、ドイツ軍敗北を予感していたのだ。国がこのままでは滅んでしまうと危機感をメンバーたちはもったのだ。まさに憂国ではないか。ショル兄妹は信念をもって闘った。
この映画の成功は、主人公を妹のゾフィーに定めていることだ。視点が一つなので物語がぶれない。
この戦いは反ナチの抵抗運動として歴史的国際的にもよく知られ、戦後何度かドイツで映画化されている。
だが、1990年代に入って、ナチの文書の中からこの兄妹の最後の5日間のこれまで知られなかった記録が発見されたのだ。それを土台に、今回きわめてリアルにかつ十分“演劇的に”この映画が立ち上げられたのだ。制作者の揺ぎない演出に感動した。
なにより妹ゾフィーを演じたユリア・イェンチ が素晴らしい。幼くけなげで、凛とした抵抗する女ゾフィーを彷彿とさせる演技に心を奪われた。
この映画がベルリン映画祭で3つの部門でグランプリを獲得したのはよく分かる。私の評価、星5つのうち、星5つ!。
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