昏い暝い暗い(クライクライクライ)
久しぶりに大磯で休日をむかえている。草をむしって、皿うどんを食べて、それから詩集を読もう。個人集ではない。アンソロジーだ。アンソロジーの元の意味は、ギリシア語のアントロギアで花を摘むという意味がある、と大岡信が教えてくれた。美しい花というより自分の好きな花をあちこち拾い読みしよう。いや、今日の気分は毒のある花を読みたい。
石垣りんというおばさんは若い頃から働いてずっと独身で昨年死んだ。誠実そうな詩を書いてきたと思ったが。
ねむれない夜の苦しみも
このさき生きてゆくそれにくらべたら
どうして大きいと言えよう
ああ疲れた
ほんとうに疲れた
オトナシイ人が怒ると結構怖い。
同じく、若いときから働き厳しく闘ってきた関根弘が晩年こんなことを感じていたと知って驚いた。
青春時代
ぼくも天皇の軍隊に召集されて
眠くて仕方がないのに
不寝番をつとめたことがある
それなのにいまぼくは
眠りたくても眠れないので苦しい!
心ならずも不寝番をつとめさせられている
昭和の死は悲しくない
早くぼくの人生も
そっくりどこかへ運んで持ってってくれ
生まれてきて損したよ
あんなに一生懸命新しい世を作るのだと頑張った関根が最後にもらした言葉が、これほど厭世的とは思いもよらなかった。今生きていればもっと絶望は深いはず。
闘うプロレタリアであったりニューメディアのブルジョアになったり、つじつまの合わない谷川雁の生き方にはどうしようもなく惹かれる。
おれは大地の商人になろう
きのこを売ろう あくまでにがい茶を
色ひとつ足らぬ虹を
天野忠というおっさんはオトナシそうな顔をして怖いことを書いた。40年間連れ添ったかみさんが傍らで寝ているのを見て、こんな詩を書いたのだ。
ずうっと毎晩
私のとなりに寝ている
あれが四十年というものか・・・・・
風呂敷のようなものが
うっすら
口をあけている
歯の抜けた老妻を覗き込んで、風呂敷のようなものが口をあけている、と詠嘆するアマノチューの黒いユーモア。
ここに選んだ4人の詩人。石垣りん、関根弘、谷川雁、天野忠。普段は一生懸命生きることを詠った人たちだ。でも調べれば、昏い暝い暗い詩も書いていた。それを知るとちょっっとほっとする。
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