五味調和
韓流ドラマというくくり方は好きではない。「冬のソナタ」が傑出したドラマであって韓国のドラマがすべて優れているとは、私は見なしてきてはいない。たしかに、「シュリ」以降の韓国映画のレベルの高さには目を見張るものがあるが、テレビドラマでいえば、「冬ソナ」以外あまり見るものがないと考えていた。
来週、長崎で韓国宮廷料理の話をすることもあって、ここ数日「チャングムの誓い」を連続して視聴している。これは60分×54本もある長大なドラマで、なかなか終わらないが飽きない。面白い。あらためて韓流テレビドラマを見直した。
「冬ソナ」はユン監督のもつメロドラマの特性を把握した制作によるところが大きいが、「チャングム」は物語りする面白さであろう。イ・ビョンフン監督自身語っているのだが、この歴史ドラマは史書の中に一行だけあった医女朝今という言葉から発想したというだけあって、話が奇想に満ちていて観客を飽きさせないのだ。
この「チャングム」論はいずれきちんと語ろうと思うが、「冬ソナ」とあわせてこの2本のドラマの魅力が共通しているのはキャスティングであろう。配役の層の厚さである。
「チャングム」であれば、主人公の上司にあたる二人の女官、ハン尚官とチェ尚官を演じる女優であり、「冬ソナ」であればキム次長を演じる男優であったりする。
日本のテレビドラマはほとんどアイドル中心で、仮に高年の男女の役者が出ても単なる脇役でしかない。その人物に思い入れるほど描かれてはいない。要するに配役があまりに若者、人気中心になされていて人物像が平板でドラマにまったく膨らみがなく、大人が見るにたえないのだ。韓国の料理の基本は五味調和だ。塩味とかしょうゆ味という偏った味付けでなく甘味、辛味、酸味、苦味、鹹味など5つの味の調和を図ることでだという。配役もそうだ。若者だけでなく中年、老人、などが広く厚く選ばれている。だから芝居が単調でなく面白くなるのではないだろうか。
ところで、ことわざというのは食文化の民族性を発露していると、韓国の俚諺を読んでいて思った。面白いと私が感じたものを備忘のためここに書いておく。
○牛の耳に経を読む(馬の耳に念仏)
○黒い子犬で豚を仕立てる(ウソで真実を塗り固める)
○アヒルが止まり木に止まったようだ(非常に場違いだ)
○えびで鯉を釣る(えびで鯛を釣る)
○唐辛子は小さくても辛い(山椒は小粒でぴりりと辛い)
○きゅうりのつるになすびがなるか(この親にしてこの子あり)
○かぼちゃに鍼(ぬかに釘)
○かぼちゃが転がる(棚から牡丹餅)思いがけない授かりもの
○梨を食べて歯をみがく(一挙両得)
○おつゆでやけどした者は冷たい水を見てもふうふう吹く(羹にこりて膾を吹く)
○豆腐を食べて歯が抜ける(どんなときも油断は大敵)
○知らぬが薬(知らぬが仏)
さて、今月末に私は二大ドラマの二人の監督、ユン・ソクホ、イ・ビョンフン氏に会うことになっている。二人の共通性や違いをしっかり見てきたいと今から考えている。
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