ハッピーでないのに
先日、CMディレクターの杉山登志のドラマが放映され話題になった。桃屋や資生堂、昭和石油のコマーシャルなど、数々の名作を残した人物だ。37歳で自死した。
彼については荻窪ぽろん亭の主人鷹山みよから話を聞いていた。美大出身のみよは美術の予備校時代から登志のことを知っていた。彼女は登志のことを好きだったようだ。みよも先年60過ぎで病死し、詳しく話を聞くことも今ではできないが、生前登志の才能と奇矯な振る舞いについてはよく聞かされたものだ。登志が描いたサーカスの絵3枚をみよは大事に保管していた。荻窪ぽろん亭の壁には今でも登志のその絵が架かっている。
リッチでないのに
リッチな世界などわかりません
ハッピーでないのに
ハッピーな世界などえがけません
こういう辞世の詩を登志は残した。華やかなCM世界に身をおいた登志の死と詩であったから、亡くなったときもマスコミが騒ぎ、その生と死は伝説となった。
死を選んだ理由は知らない。さまざまな憶説はあるが、たえず死の影を背負った人物ではあったらしい。深夜まで飲み歩いたあと、街角の証明写真ラボに入って自画像を撮影するのが趣味だったようだ。その行為はまるで遺言である。
昨日の大騒ぎの様子を、テレビの深夜ニュースで見ながら、杉山登志の最後の言葉が、ふとよみがえった。目白の商店街ではお祝い行事で一色、マイクを向けると「男のお子様でうれしい」と、てばなしで喜ぶ人々。見ていて、複雑な気持ちになる。
子供が誕生することは誰であれうれしいものだ。だが、こんなにメディアも人もはしゃぐものなのか。すぐ隣に祝福されないどころか、自分では選べない親から虐待されている子供が、イマ、このトキに苦しんでいるかと想像すると、ハッピーなふりはなかなか出来ないものだが。
そんな頑ななことを言わずに、おおらかに受け取ったらとでも言われそうだが、昨今の親殺し、子殺しの事件が私の心をつかんで離さない。
8月8日に放送された「にっぽんの現場・48時間の約束」というドキュメンタリーを見た。
副題は埼玉・児童相談所の闘いとある。幼い子供たちがどんなに無防備に凶暴なものの前に立たされているか、見ていると息苦しくなった。
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